2010年09月01日

【目次】議員年金〜何故、地方議会議員年金制度は廃止すべきか

地方議会議員年金制度に関する書籍を出版しました。今まで、私がHPや本ブログで解説・提言した内容をまとめたものです。類似の内容を本ブログでも扱っていますので、是非ご覧頂き、ご感想を頂けたらと思います。

本の表紙、クリックすると購入サイト(アマゾン)に移動します。





第1章 制度の沿革
1.昔はあった地方議員の退職金(制度の成立の背景)
戦後の地方議員には退職金があった/地方議員年金制度の成立/地方議会議員互助年金法の内容/地方議会議員年金制度の礎

2.退職金から年金に(現行制度の確立)
地方公務員等共済組合法への統合/公費負担規定の是非/強制加入の是非と退職一時金の導入

3.10年持たなかった年金財政(最初の制度破綻)
予見された財政破綻 /公費負担の導入〜国民負担の始まり/制度趣旨を無視した対症療法

4.国民負担による待遇向上(議員年金の社会保障化)
相次ぐ年金待遇向上の要望/30年間の空白

5.遅すぎた構造改革
初の給付水準の引き下げ(現役会員のみ) /更なる給付水準の引き下げ(既裁定者も含む)

6.国民負担は1兆円以上
政権交代の影響/国民の民意はどこへ


第2章 制度の概要
1.地方議会議員年金とは
地方議会議員年金の法的根拠

2.誰が運用しているのか
地方議会議員共済会の概要(法151条)/共済会の定款・登記(法152〜154条)/代議員会(法155条)/役員(法156条)

3.どんな給付があるのか
退職年金(法161条) /退職一時金(法161条の3)/公務傷病年金(法162条)/遺族年金・遺族一時金(法163条、163条の3)

4.議員年金は本当に『特権的』制度か
批判の中身/受給資格期間の短さ/被用者年金との重複需給が可能/議員年金間の重複需給が可能/退職一時金の存在/転給制度の存在


第3章 制度の比較
1.国会議員年金制度(平成18年に廃止)
制度の沿革/制度の概要/地方議員年金との相違

2.米国の地方議員年金の現状
国際的制度比較論の重要性/多様な米国の地方自治制度/米国の地方議会の現状/州議会議員の年金制度/米国の基礎自治体における地方議会議員年金制度/議員年金は住民自治の賜物


第4章 制度の現状
1.厳しい現状と相次ぐ批判
目前に迫る積立金の枯渇/強まる批判/1人が複数人を支える現状/掛金率と負担金率の上昇と給付水準の低下/低下する運用利回り

2.何故、制度を維持するか
制度維持の3つの理由/総務大臣答弁の矛盾

3.制度維持の中身
会員の自助努力による継続/公費負担による救済案 /A案/B案 /市議会議員共済会案/市議会議員共済会案に対する考察 /国民の負担も限界に達している/市町村議会議員共済会が頑なな理由/都道府県議会議員共済会が平静な理由/制度を維持する際の留意点

4.制度廃止の動き
地方議会議員のディレンマ/地方議会議員年金制度に関わる意見書/廃止に向けた署名運動等/掛金不払い運動/ミイラ取りがミイラになる制度設計/半数の議員が制度廃止を求める

第5章 制度の廃止
1.何故、制度を廃止するべきか
廃止以外の道はない /既得権者の思い

2.年金財政が悪化した本当の理由
既に破綻した制度/誰も触れない共済会の責任/もっと早くできた自助努力/自助努力で得られた財源の試算
3.国民負担は1兆円では済まない
国民の負担は一体いくら/人口及び自治体財政の動向/地方分権の傾向/現時点で廃止する方が公費負担は少ない

4.誰の為の老後保障か
制度の趣旨を改めて考える/8年間頑張っても無年金

5.地方分権の進展
中央集権的制度

6.住民自治の不在
住民自治の不在/プロセスの重要性

7.制度の廃止
国民合意が先決/廃止にかかる3つの方法/廃止に関する私案

第6章 制度の将来と住民自治
1.制度廃止の影響
廃止にかかる懸念/多様な人材の確保/金権選挙脱却こそが最大の老後保障

2.地方自治制度の抜本的改革
地方自治法の改正/議員の意識改革/住民こそ責任感を持つべき/住民自治こそが地域を変える

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2010年08月22日

第5章 制度の廃止 5.地方分権の進展

5.地方分権の進展
中央集権的制度

 第四の制度廃止理由は地方分権の進展である。
 主要政党は、日本の中央集権制度を変更すべく、「地方分権」或いは「地域主権」を掲げている。また、地方議員や首長の中の多くも、同様の主張を行っている。地方分権改革は現在進行形で、今後政権が変わろうともこの方向性は変わらないと思われる。
 しかし、全国の地方議員全ての老後保障を国の法律で一律に定める現行の地方議会議員年金制度は、最も中央集権的な制度である。従って、「地方分権」「地域主権」を主張する者が、同制度の維持を主張することは大きな論理矛盾である。また、地方分権によって、将来の年金財政基盤が大きく揺らぎ、更なる国民負担が生じる可能性が高いことは前述した通りである。
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2010年08月21日

地方議員年金の廃止へアクション

地方議員年金の廃止へアクション!市民と議員全員集合!!というシンポジウムに参加してきました。名古屋市の愛知県産業労働センターで開催されました。

基調講演では、河村たかし名古屋市長と岩崎恭典四日市大学総合政策学部教授による対談が行われました。河村市長は持論の議員のボランティア論を展開されていました。

第2部では、中部周辺の自治体議会の年金廃止の意見書の可決状況が報告されました。また、三谷哲央三重県議会議長、出口憲二郎徳島県小松市議会前議長及び奥山たえこ杉並区議によるパネルディスカッションが行われました。

質疑の時間に、三重県議会議長(全国議長会副会長でもある)に、都道府県議会議員に対する個別の議員年金に関するアンケートをとることを要望しました。
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2010年08月10日

第5章 制度の廃止 4.誰の為の老後保障か

4.誰の為の老後保障か
制度の趣旨を改めて考える


 第三の制度廃止理由は、制度目的の形骸化である。地方議会議員年金制度の目的は、議員及びその遺族の生活の安定に資すること、つまり、議員の老後保障である。しかし、この制度には老後保障としての大きな瑕疵があることは何度も触れてきた。12年以上という在職期間要件を満たさない者にとって、退職一時金は受け取れるが、その期間の議員としての老後保障は欠落することになるからである。そして、要件を満たさずに退職年金を受け取れない者の割合は半数近くに上る。このように多くの者が老後保障を受けられない年金制度が、議員及びその遺族の生活の安定に資する制度とは言えない。むしろ、選挙という不確定な条件に老後保障を委ねる同制度は、その趣旨とは逆に議員の不安を増幅させている。

8年間頑張っても無年金

 同制度が如何に議員の老後保障として矛盾しているかを改めて考えたい。例えば、2期8年間全身全霊を尽くして議員活動にあたった者が、不本意ながら3期目の選挙に落選したり、或いは自らの意思で勇退したりした場合を想定してほしい。現行の制度下では、8年分の議員の職責にかかる老後保障を受けられないばかりか、掛金の半額程度しか退職一時金として受け取ることができない。
このような制度が本当に「地方議会議員が在職中に安心して議員活動に専念できる」制度と言えるだろうか。現行の制度は、3期12年以上地方議員を務めた一部の議員のために、多くの地方議員経験者と国民に負担を強いる制度となっている。
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2010年08月02日

第5章 制度の廃止 3.国民負担は1兆円では済まない

3.国民負担は1兆円では済まない
国民の負担は一体いくら


 第二の制度廃止理由は、国民負担の増大である。地方議会議員年金制度検討会の試算によると、制度を廃止した場合の国民負担は約1.3兆円である。これに対して、同会の試算の最も厳しい試算(A 案)によると、制度を維持した場合の平成23年度から平成43年度までの国民負担は約5500億円となる。こうして見ると、少なくとも今後20年間だけをとってみれば、制度を継続した方が、国民負担が少ないようにも見える。
 しかし、ここには大きな落とし穴が存在する。制度廃止の場合の試算は、既得権者の利益に相当配慮した場合の試算であり、言わば国民負担の最大値である。一方、後者の場合は議員に対しても相当厳しい条件の場合の試算であり、実際に市町村議会議長会は反対している。つまり、5500億円という試算は国民負担の最小値である。
 今まで政府関係機関が提示した試算が正確だったことは一度もない。そして、この試算にも同じことが当てはまる。以下、試算に関わる2つの問題点を指摘する。

人口及び自治体財政の動向

 第一の問題点は、人口や自治体財政の動向を的確に考慮していない点である。
 まず、地方議会議員年金制度検討会が示した都道府県議会の会員数の試算についてであるが、平成20年度の議員定数が2,749人であるのに対して平成43年度の議員定数を2,495人と試算している。20年間で概ね9%の減少率である。検討会はこの試算の前提条件として、「過去10年の統一地方選挙ごとに平均で▲33人定数が減少(H11:▲30人、H15:▲36人、H19は合併の影響が強く考慮せず)していること(43)」であるとしている。しかし、この試算には大切な前提条件が見落とされている。平成11年及び平成15年時点では、日本の総人口は増加していたという前提条件である。平成17年、日本は戦後初めて人口減少に転じた。平成17年以前にも各県を個別にみれば人口減少は生じていたが、今後は段階的に全ての都道府県が人口減少に転じるようになる(44)。従って、平成11年と平成15年の定数減少率の平均値である33名よりもさらに多くの会員数が減少していくと見込まなければならない。
そこで、法律による上限数等は考慮せず、純粋な人口比例で会員数を試算する。日本の将来推計人口(45)によると死亡中位・出生中位の場合、平成20年から平成42年までの人口減少率割合が10%程度である。この場合、平成43年度の会員数は2,463人であり、共済会の試算とほぼ一致する。しかし、死亡高位・出生低位の場合、平成43年度までの人口減少割合は13%以上で、平成43年度の会員数の見込みは2,380人となり、共済会との誤差は115人となる。この場合試算より5%近い収入不足が出ることになる。試算に関しては常に最も厳しい状況も想定する必要があることから、会員数についての試算は検討会の試算よりも減少する可能性がある。なお、市町村議会の試算については母体数も多く、後述するような理由から試算は不可能である。
次に、報酬についてである。平成23年から平成43年までの20年間における検討会の試算では、都道府県議会議員の平均報酬月額は62万のままであり、市町村議会議員の平均報酬月額は、35.6万円から34.7万円と2%程度の減少を見込んでいる。
しかし、総務省の発表した『地方公務員の給与の実態』によると、平成13年度から平成20年度までの7年間で、都道府県議会議員の平均月額報酬は6%程度、市町村議会議員の平均月額報酬は5%程度減少している。この点を勘案すると、市町村議会議員の報酬の減少率が20年間で2%というのは低く見積もりすぎである。地方自治体の財政が厳しくなり人口も減少する中、地方議会議員の報酬の引下げは相当額まで進むと考えられるからである。
また、都道府県議会の場合、「現在すべての団体の報酬が標準報酬である62万円を上回っており、今後も62万円で一定と(46)」見込んでいる。しかし、現在47都道府県議会で報酬額が最低である島根県議会の報酬月額は65.4万円である。島根県は今後20年間で2割近い人口が減少する推計となっており(47)、標準報酬月額が62万円を下回る可能性は十分にある。これは、現在報酬月額が70万円前後の他の自治体にも同じことは当てはまる。さらに、月額報酬が標準報酬月額の上限値を下回らない場合であっても、報酬月額の引き下げは期末手当の減少になり、結果として期末手当に一律に課されている特別掛金収入の減少となる。この点は共済会の試算には見込まれていない。このように検討会の試算は大きな誤りを犯す可能性がある。

(43)地方議会議員年金制度検討会『資料3 財政見通しについて』「財政見通しの前提条件についての考え方」平成21年5月29日

(44)国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)によると、人口減少県の数は32(H17)→40(H22)→42(H27)→45(H32)→46(H37)→47(H42)と推移する予測となっている。

(45)国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)

(46)地方議会議員年金制度検討会『資料3 財政見通しについて』「財政見通しの前提条件についての考え方」平成21年5月29日

(47)国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)

地方分権の傾向

 第二の問題点は、今後の地方分権の動きをまったく加味していない点である。この点は最も重要である。
 検討会の試算は、地方自治法による画一的な地方自治制度が今後も継続することを前提としている。日本の地方自治体は、人口を中心とした自治体の規模で議員の定数や待遇が横並びに定まってきた。もちろん、条例でそれらを逸脱することは可能であるが、それは財政が破綻する等特殊な事情が起きた場合の例外的措置であり、総じて一律的であることが統計的にも確認できる。
 確かに、このような画一的な地方自治制度が、他の先進諸国では見られない全国一律の地方議会議員年金制度の導入を可能にしてきたわけであるが、今後この前提条件が続くと考えられない。「地域のことは地域住民が決める」という地域主権を実現するためには、地方自治法の抜本的な見直しが不可欠であり、既存の地方自治制度は確実に変更を余儀なくされるからである。また、道州制等地方自治体の枠組みを根本から変更する主張も根強く存在する。更に、平成21年12月14日の第1回地域主権戦略会議(内閣府)において、地方自治法の抜本的改正及び「地方政府基本法」の制定が工程表に盛り込まれた。このような傾向を考慮する限り、現行の地方自治制度は、今後どのような形になるかは予測できないにせよ、大きく変更されると考えるのが順当であろう。
 例えば、福島県矢祭町議会のように日当制を採用する議会も増えるかもしれない。また、二元代表制ではなく英国の地方議会でよくみられる議院内閣制を採用する自治体もあるかもしれない。米国の地方議会のように少数の議員で議会運営をする自治体も出てくるだろう。さらに、地方自治体の枠組み変更の中で都道府県が消滅してしまうかもしれない。地方分権社会における住民自治の可能性は尽きない。
 ところが、このような自治体の多様性に対して、地方議会議員年金制度はただただ無力である。平成の大合併は自治体の数は変わったが、地方自治制度の中身は変わらなかった。それでも、現行の制度は対応できずに激変緩和措置という公費負担の議論をせざるを得なくなっている。21世紀の地方分権改革は自治体の数だけでなく、地方自治制度の中身も大きく変容させる。このような地方分権改革の影響は、検討会の試算にはまったく考慮されていない。制度を継続しこのような事態が起きた場合、再び不測の事態として激変緩和措置という名の公費負担を国民に求めていくのであろうか。

現時点で廃止する方が公費負担は少ない

 今後の地方議会議員年金制度の試算をすることは不可能である。なぜなら、その試算が可能であるためには、今後の分権社会における自治体像を的確に予測しなければならないからである。そして、この地方分権改革は、年金財政に負の影響をもたらすことはあっても正の影響をもたらすことがないことは確実である。
 将来の自治体像があまりに多様すぎて、筆者自身も制度を継続することによる国民負担額を予測することはできないが、唯一つ言えることは、制度を継続することで1兆円を遥かに超える国民負担が今後20年の内に生じるということである。
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2010年07月31日

地方議会議員年金制度

地方議会議員年金制度の過去ログはこちらです。

鹿児島県阿久根市では、日当制への移行に伴い、市議4名が掛金の支払いを拒否したそうです。以前徳島県小松島市でも同様の案件がありました。
法律に違反することは避けるべきですが、このような地方議員の声を国や共済会はしっかりと受け止める必要があります。
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2010年07月19日

第5章 制度の廃止 2.年金財政が悪化した本当の理由

2.年金財政が悪化した本当の理由
既に破綻した制度

 第一の制度廃止理由は、地方議会議員年金制度は既に破綻をしているということである。以下、制度発足時から現在に至るまでの過程を改めて振り返る。
 昭和36年、現行制度の前身である地方議会議員互助年金法が成立した際、地方議会議員年金は、会員の拠出金によってのみ運営される互助年金制度として発足した。発足の際確認されたことは、@掛金によって賄われる互助年金であること、A地方への過大な負担は避けることである。この点は、現在に至るまで変わっていない同制度の基本である。
 次に、昭和37年の地方公務員等共済組合法に合流された際に、公費負担が制度として導入されたが、B公費負担の投入は共済会が自助努力(掛金の引き上げ及び給付の引き下げ)を行った後の例外的措置であることも確認されている。また、前述のように公費負担については地方財政に過大に負担をかけないという留保があることも忘れてはならない。
 しかし、初めて共済会の破綻が予見された昭和46年の法改正の際、後述するように共済会は十分な自助努力を行うことなく、多くの公費負担を地方自治体より受け入れてきた。このことは、@とBの条件に反する事実である。さらに、30年以上に渡り6000億円以上の公費を投入してきたにもかかわらず、共済会の収支は悪化の一途を辿り、更なる公費負担率の引き上げを行った結果、地方財政には多大なる負担が寄せられ、無視できない程度にまでなっている。これは、Aの条件に大きく反している。
 以上を勘案すると、地方議会議員年金制度の現状は、制度発足当初に予定された適正な状態とは大きく乖離しており、実質的には破綻をしている制度と言っても過言ではない。従って、以後会員の自助努力のみによって制度を継続するというのであれば別であるが、実質的に破綻した制度に公費負担を投入して存続させることは、更なる国民負担の増大を招き適当ではないと考えられる。

誰も触れない共済会の責任

 「地方議会議員は、何か悪いことをして、年金財政を破綻させたわけではない」、平成21年12月4日の第5回地方議会議員年金制度検討会における全国市議会議長会会長の発言である。確かに、個々の議員が悪いことをしたわけではないし、近年の度重なる給付水準の引き下げや掛金率の引き上げにおいて身を削っているという思いが強いことも理解できる。少し前に引退した既裁定者の相当優遇された給付水準を見れば尚更だろう。
また、平成に入ってから進められた市町村合併の結果、年金財政が更に悪化したこともあり、地方議員の中には国に対する被害意識を持っている者も少なくない。しかし、国に責任を転嫁するばかりでは、本当の財政悪化の理由は見えてこない。
実は、年金財政悪化の最大の要因は、共済会及びその構成員である議員にある。早期の自助努力を行わず、安易な税金投入に頼ってしまったことが根本的な財政悪化の原因である。

もっと早くできた自助努力

 「いろんな部分をやっぱりやった上で最後にやっぱり公費負担を引き上げるということが必要になってくる」と、平成14年4月25日の参議院総務委員会において高橋委員は自助努力の必要性を指摘している。遡って、初めて共済会の破綻の危機が訪れた30年前の昭和46年5月12日の衆議院地方行政委員会においても、山本政府委員が「やはり経営努力といいますか、共済会自身の努力が必要であろうかと思います。掛け金を上げるなりあるいは給付の歯止めをするなりして自己努力をする必要があろう」と自助努力の必要性を強く説いている。さらに、平成18年5月16日衆議院総務委員会において、富田議員は「もう制度ができてから、昭和四十年代にかなりこの地方議員年金というのは制度としては成熟化してきて、財政的に厳しくなるんだというのは恐らくわかっていたんだと思うんですね。それなのに、結局十四年まで何もできなかった」と昭和40年代から30年間以上、今日の状況が予見できたにもかかわらず共済会としての自助努力がほとんどなされなかったことを指摘している。この他にも今日に至るまで自助努力を求める多くの必要性が指摘されているし、何よりも昭和46年法改正時には「地方議会議員の年金制度については、その健全化をはかるための措置を検討すること」という付帯決議がなされている。
 本来であれば、昭和46年の法改正に合わせて、現在行われているような厳しい自助努力を行うべきであったのではないだろうか。昭和47年から平成に至るまで、公費負担率は「掛金総額の1/9」から「標準報酬月額の9.5/100」にまで大幅に引き上げられたにも関わらず(額にして4.4億円から179億円)、共済会によって行われた自助努力は掛金率をゆるやかに4%程度引き上げただけである。これでは、公費負担の上限が定まっていないことを奇貨として、自助努力を怠ってきたと言わざるを得ないのではないか。

自助努力で得られた財源の試算

それでは、当時どの程度の自助努力が求められたのであろうか。独自の試算を行った。まず掛金率であるが、保険数理を用いて厳密に計算すれば大変厳しい数字が出てくるわけだが、「12/100」という掛金率を用いる。この掛金率は、昭和37年参議院地方行政委員会において、平準保険方式を採用した場合に地方議会議員年金制度を維持するために求められる掛金率に対する松浦功説明員の見解である。給付水準は1割削減する。また、昭和47年から平成19年までを試算期間とする。
 以上の条件で試算をすると、各共済会の合計で約2062億円(都道府県議会195億円、市958億円、町村909億円)の財源が捻出されることが判明した。また、給付水準を2割削減した場合は3548億円の財源が捻出された。さらに、仮に平成18年法改正において市町村議会議員共済会に課された「掛金率16/100」、「給付水準35/150」を昭和47年時に導入した場合の試算をすると、7492億円の財源効果が見込まれた。
 これらの全ての試算は、共済会の過去の実績額に掛金率等を掛け合わせた荒いもので、多少の誤差はある。しかし、現在の財源不足が見込まれている約3500億円程度は、昭和47年の段階で共済会が適切な自助努力に踏み切っていれば、十分対応できていたと考えられる。これらの試算は、平成の大合併の影響分として算出された1883億円をはるかに上回る額である。
 以上は、昭和47年当時においても十分考えられ得る現実的な試算である。地方議会議員年金制度が今日のように悪化した最大の要因は、共済会が制度の求める徹底的な自助努力を長年にわたり怠ったことである。国に対して市町村合併による激変緩和措置(税金投入)を求める気持ちも理解できないわけでもないが、まずは自分たちの自助努力の欠如によって公費負担が増えたという認識を当事者が持つことが必要である。
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2010年07月05日

第5章 制度の廃止 1.何故、制度を廃止するのか

第5章 制度の廃止
1.何故、制度を廃止するべきか


廃止以外の道はない

 地方議会議員年金制度自体に大きな瑕疵があることは制度の沿革で触れてきたとおりであるが、それ以外の制度廃止の理由は以下の通りである。各理由の具体的な内容については後述する。
 第一の理由は、年金財政の破綻である。度重なる公費負担率の引上げにも関わらず、平成23年度には市町村議会議員年金基金は破綻する予定である。共済会が適切な自助努力を行ってこなかったために、年金財政は会員の努力のみでは再生不能な状態にまで悪化している。
 第二の理由は、国民負担の増大である。既に国民負担は限度を超えているが、今後制度を維持するためには更なる国民負担が必要となる。しかし、これ以上の税金投入に対して国民の理解を得ることは非常に困難である。
 第三の理由は、目的の形骸化である。制度の目的は議員の老後保障であるにもかかわらず、半数近い議員は年金の受給資格を得ることができないまま議員を引退する。一部の受給資格を得た者だけに年金財源が集中する制度が、果たして議員の老後保障に資するかは改めて問わねばならない。
 第四の理由は、地方分権の進展である。同制度は全国の地方議会が画一的に運営されていることを前提としている。しかし、政府は地方分権或いは地域主権(本書は敢えて両概念を明確に区別しない)の推進姿勢を明確にしており、今後この前提条件が大きく崩れることは確実である。多様な自治体運営を目指しながら、画一的な制度を維持することは大きな矛盾であり、極めて困難である
 第五の理由は、住民自治の不在である。どのような制度であっても、地方自治に関わる制度は住民の合意の下に創設される必要がある。しかし、制度設立時も公費負担導入時も、国民的な議論はほとんどなされず同制度は導入・維持されてきた。今後制度を維持するにしても国民的議論と合意は不可欠である。
 以上の理由を勘案すると、制度を維持するという選択は大変困難であり、制度廃止の方向性を定めた上で、細部の議論を進めていくことが賢明であると考えられる。

既得権者の思い

 年金制度の維持を主張するのは基本的に既得権者である。既得権者は大きく区分けて2つに分類できる。第一は、既裁定者(年金受給者及び有資格者)である。第二は、現在掛金を納めている現職議員である。
 既裁定者が望むことは、現在の年金給付が今後も維持されることである。従って、制度が廃止されようとも、国会議員年金制度の廃止がそうであったように、現在の給付が継続されるのであれば、大きな問題は生じない。
 次に現職議員が望むことは、今まで支払った掛金が一時金として返還されることである実際、一時金がしっかりと措置されるのであれば、廃止もやむを得ないという意見が各議会又は議員からなされている。近年は、市町村議会議員の掛金負担率も大幅に上がり、このような考え方を持つ議員は増加傾向にある。
 以上からも、純粋に制度論として制度維持を望む者は多くないのが現状である。地方議会議員年金制度に関わる既得権者にとって、制度の維持は目的ではなく、単なる手段でしかない。自分達の望む条件を確保できるのであれば、制度の存廃は問題とする者はほとんどいないだろう。地方議会議員年金制度の問題は既に条件闘争の段階に論点は移行している。
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2010年06月07日

第4章 制度の現状 4.制度廃止の動き

4.制度廃止の動き
地方議会議員のディレンマ


 地方議会議員年金制度は、その特異な部分ばかりが抽出されて報道されるため、特権的な制度であるという印象を世間に持たれ、地方議員は同制度を維持することに固執していると思われがちである(例えば、前述したようにほんの一握りの議員が駆け込み辞職をすること等が、世論の心証を悪くしているのは間違いないであろう)。
 確かに、給付を受けている者の中には公的年金と比較して過分な年金給付を受けている者もいるし、現職議員で受給資格を得た者の中には相当な掛金を納めている者もおり(41)、制度を維持する声が多く存在するのは事実である。このような状況を考慮して、政府や共済会も制度堅持の姿勢を崩していない。しかし、客観的に分析すれば、現在の地方議会議員年金制度は公的年金と比較しても特権的な制度とは必ずしも言えず、また国民へ大きな負担をかけていること等から、議員の中には―特に期数の低い若手議員を中心として―制度廃止を望む声が多いことも事実である。さらに、受給資格を既に得ている議員の中にも、今までの掛金相当額が保障されるのであれば、制度廃止もやむを得ないと考える者も増えていている。
 しかし、これだけ地方議員のあり方に関わってくる問題であるにもかかわらず、同制度は、地方公務員等共済組合法に基づいて制度設計をされているため、国会における審議なくして制度の改廃をすることは法的には不可能である。国会議員は、自分たちの生活にかかる国会議員年金制度については、既得権にほとんど手をつけることなく廃止したが、同制度の現状については総じて無関心である。ここに地方議員の抱える大きなディレンマがある。
 但し、地方議員も単に傍観しているわけではなく、近年は制度維持・廃止各々の立場から様々な取り組みが地方においても展開されるようになってきている。これらの動きを考慮する限り、地方議員における制度改廃の議論は活発化しているように思われる。

(41)政令市の現職議員の中には2,000万円以上の掛金を納めている者もいる。

地方議会議員年金制度に関わる意見書

 全国各地で地方議会議員年金制度に関わる意見書が提出されている。その内容を大別すると、制度の継続を求めるものと制度の廃止を求めるものの2つである。特に、基礎自治体レベルでの意見書提出が活発である。当初は、制度の堅持を求める意見書が大勢を占めていたが、最近では制度廃止を求める意見書も可決されており、平成21年12月現在6件の廃止にかかる意見書が可決されている(42)。例えば、平成21年12月25日に茨城県つくば市議会では制度維持に関する意見書が、平成21年11月30日に岐阜県山県市議会では制度廃止に関する意見書がそれぞれ可決されている。
 また、都道府県議会にもこの動きは波及しており、例えば東京都議会では平成17年12月に「地方議会議員年金制度の廃止に関する意見書」を提出する試みが行われた他、平成20年6月茨城県議会では、都道府県議会では初めて、廃止を趣旨とする意見書を賛成多数で可決した。

(42)平成21年12月1日付け朝日新聞

廃止に向けた署名運動等

 地方議会議員年金制度を廃止するための署名運動が、ローカルパーティを標榜するネットワーク運動系の団体を中心として進められてきた。政府に対する要請活動を行ったり、ネットワーク系の地方議員がいる場合は、意見書や請願書の提出という形で地方議会での訴えを強めたりしている。議員年金廃止を自らの活動の中心に据え、同制度に対する関心を高めているという点では同団体の取り組みは際立っている。
 また、平成13年6月、千葉県北西部の超党派自治体議員のグループが、地方議会議員年金に関する意見書を当時の首相及び総務大臣に提出している。その内容は給付水準の引き下げ等年金制度の既得権に踏み込む議員にとって厳しい内容であったが、国会の質疑でも取り上げられ、話題を呼んだ。
 さらに、平成21年、一般市民や地方議員によって組織される「地方議員年金を廃止する議員と市民の会」が結成され、制度廃止に向けた国への要請やフォーラム及びデモ活動を積極的に行っている。
 これら以外にも、若手議員の全国組織が制度廃止の意見書提出を検討する等、大小合わせると、制度廃止に向けた地方議員の動きが近年全国的に活発化している。

掛金不払い運動

 平成21年8月、徳島県小松島市議会で議長を含めた7名の議員が、掛金を報酬から天引きすることを停止する手続きを行った。この件について、議長は「廃止に向けた議論のきっかけになるよう実力行使に出た」旨の発言をしている。年金制度の先行きも見えない中、地方議会議員の苛立ちが表面化した事例として、一部ではこの行動を評価する向きもある。
 但し、掛金の支払いは法律に定められた義務規定であり(法166条)、いかなる理由があろうとも、法を遵守すべき議員が法律違反を正当化するようなことがあってはならないのは言うまでもない。しかし、この一件が国や共済会に与えた影響は大きい。但し、現在では掛金の不払いは中止され、支払いを再開している。
また、平成22年7月には鹿児島県阿久根市でも4名の市議が掛金の支払いを拒否した。こちらの場合は、議員報酬が日当制で1日1万円となっており、ほぼ無報酬であった月の掛金も支払わなければならないという制度の矛盾が生じている。

ミイラ取りがミイラになる制度設計

 理由は様々であるが、以前から地方議会議員年金制度に反対する地方議員は絶対数存在する。21世紀に入ってからは、国民からの批判もさらに大きくなり、特に現役議員にとって優位性の少ない制度になったことも相まって、在任期間が短い議員であればある程、制度に反対する者は増加傾向にあると推定される。地方議会からの制度廃止の意見書が確実に増えていることや選挙公約に制度廃止を掲げる者が増えていることからも、この事は裏付けられる。
 しかし、制度反対を求める声が議会内で大勢になることは少ない。これにはいくつかの理由がある。
 第一の理由は、制度廃止を表明することに大きな圧力があることである。現職議員でも、年金受給資格を得たヴェテラン議員とそうではない若手議員の考え方には大きな隔たりがある。しかし、議会内で力を持っているのは前者であり、経験の浅い若手議員が制度廃止を訴えるには様々な困難が伴う。
 第二の理由は、若手議員も時が経てばヴェテラン議員になることである。制度廃止を訴え当選した議員であっても、1期、2期と任期を重ねるに従って積立金が段々と増えていく、そして3期目に入り年金受給資格を得る頃には、制度廃止を求める者は少なくなる。自らも既得権者になるからである。数百万円、中には1千万円以上の掛金を納めた者が少しでも元本を維持したいと考えることは当然である。また、各共済会や議長会は、期数を重ねた議長によって構成される組織であるため、これらの機関が行う年金制度に対する提案は、既得権者の利益保護に偏る傾向がある。

半数の議員が制度廃止を求める

 以上のような一連の流れもあり、全国町村議長会の地方組織である愛知県町村議長会は、「町村議会議員年金制度に係るアンケート調査」を平成22年2月から3月にかけて行った。このアンケートは、同議長会に所属する全ての議員を対象としている。
 結果は、制度継続希望者が40.4%(76人)、制度廃止希望者が54.3%(102人)、特に意見がない者が5.3%(10人)であった(回収率60.7%)。廃止方法には様々な意見があったものの、当事者である議員の半数以上が制度廃止を望んでいるという結果は、制度維持を求める関係者の大きな論理的支柱を失うことを意味し、大きな衝撃が走った。
 全国組織である各議長会は、制度廃止希望者が顕在化することを恐れ、このような個別の意向調査を行っていない。しかし、愛知県町村議長会のアンケート結果により、全国的にも相当数の議員が制度廃止を求めていることが推察されるに至った。
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2010年05月17日

第4章 制度の現状 3.制度維持の中身

3.制度維持の中身
会員の自助努力による継続


 財政見通しが大変厳しい市町村共済会の掛金と給付の見直し案について紹介していく。
 図表5が示すように、平成23年から平成43年の20年間で、2,998億円+α(余裕額:400〜800億円程度)の財政措置が必要となる。従って、地方議会議員年金制度を継続するためには、この2,998億円+αの財源措置を如何に捻出するかが重要となってくる。
 従って、地方議会議員年金制度が互助年金であることや公費負担率が制度導入当初の予測をはるかに上回り地方財政を圧迫していることを考慮すると、まず会員の掛金の引き上げ及び給付の引き下げによって対応されなければならない。

図表5 基準試算(更新後)に基づく財政累計イメージ
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出典:地方議会議員年金制度検討会『資料3 基準資試算の更新について』平成21年10月6日

 次に、図表6が示すように、掛金率の引き上げのみで対応した場合、現行の16%から29.5%に引き上げることで、3351億円の収支改善効果が期待される。また、給付の引き下げのみで対応した場合、退職年金・遺族年金を一律30%引き下げることで、3373億円の収支改善効果を期待できる。他にも両者の調整による折衷案もある。
 理論的には以上の調整で問題は解決するが、掛金率を20%以上に引き上げた場合、年金制度としての意義が失われることや、給付金の引き下げに対しては憲法29条の財産権の保護との兼ね合いから問題があるとされる。給付を引き下げる場合は、@財産権の性質、A財産権の内容を変更する程度、B財産権の内容を変更することによって保護される公益の観点からの検討が必要である(39)。
 そこで、この財源不足を補うために公費を投入するべきであるという意見が出てくる。

(39)最高裁昭和53年7月12日大法廷判決

図表6 収支改善のための方策と効果
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※収支改善効果:平成23年度〜平成43年度までの累積効果額(平成23年原価ベース)
※平成23年度から平成43年度までの財源不足額約2998億円+αを改善するため、仮に、給付引き下げと掛金引き上げにより対応した場合の機械的な算定結果である。
出典:地方議会議員年金制度検討会『資料3 基準資試算の更新について』平成21年10月6日

公費負担による救済案

 共済会には、年金財政が悪化した主因は市町村合併による議員数の急激な減少にあるとの思いが強い。そこで、合併特例法16条3項による激変緩和措置を求めている。中には財源不足分の全額を措置すべきという声もある。
 しかし、市町村合併がなくとも積立金は平成30年度に枯渇する見通しであり、全てを激変緩和措置で対応することは理論的には困難である。検討会の資料によると平成23年から平成43年までの20年間の財源不足分約3400億円の内、合併の影響による部分は約1883億円と試算されている。従って、激変緩和措置を行った場合でも、1883億円は共済会の自助努力によって対応しなければならない。
 以上の経過を受け、平成21年11月2日第4回地方議会議員年金制度検討会において、「給付と負担の見直し案について」と題する資料で、公費負担を利用した救済案であるA案とB案が示された。以下、両案を紹介する。


A案

 A案(図表7)は、「市町村は、市町村合併の影響を大きく受けたことから、激変緩和負担金を含めた公費負担率が当分の間、毎年50%程度となるように、激変緩和負担金を強化・延長し、給付水準・掛金・負担金を総合的に見直し」ている。この場合、「平成23年から約20年間で、未措置の合併影響分(約1,883億円)のうち、約7割(約1,296億円)が措置」される。また、都道府県は、「『公費負担:議員負担=4:6』を基本として、給付水準・掛金・負担金を総合的に」見直している。
 本案は、公費負担をお願いする国民に対して一定の配慮をした案と考えられるが、共済会側からは、「合併影響分を7割しか見ず、残りの3割は現役議員が負担すること」は受け入れがたいことや、「議員負担と公費負担が6:4であることがそもそもおかしい。元来5:5であるべきだ。16%の掛金は世界一高い年金で、またそれを引き上げるのは」いかがなものかといった厳しい意見が大勢を占めた。また、「7割措置するとういうことで仕方ないのではないか。当事者の気持ちは分かるが、一般国民の方々がどう考えるか、考える必要がある」といった、国民に配慮する意見も見られた。

図表7 地方議会議員年金制度における給付と負担の見直し状況(A案)
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※上記は、退職年金の「年金算定基礎率」及び「加算金」についても同率で削減
※特別掛金率は期末手当に対する掛金
※退職年金の額=平均報酬月額×{年金算定基礎率/150+加算率/150×(在職年数−12年)}
出典:地方議会議員年金制度検討会『給付と負担の見直し案について』平成21年11月2日に基づいて筆者が作成

B案

 B案(図表8)は、「市町村合併の影響による財源不足に対しては、激変緩和措置を3倍以上に強化」している。「市町村合併以外の原因による財源不足に対しては、「公費負担:議員負担=4:6」を基本として、給付水準・掛金・負担金を総合的に」見直している。本案は、国民に対する配慮よりも、議員の救済を念頭に入れた案と言える。
 本案に対しては、「公費負担率が5割を超え、国民の理解が得られない」という声があった一方、共済会側からはB案に対して一定の評価をしつつも、「公費負担率は本来的に5割に措置した上で、合併による影響分を全額公費で措置すべき」という声があがった。

図表8 地方議会議員年金制度における給付と負担の見直し状況(B案)
最高裁昭和53年7月12日大法廷判決
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出典:地方議会議員年金制度検討会『給付と負担の見直し案について』平成21年11月2日に基づき筆者が作成

市議会議員共済会案

 以上、検討会で議論された継続案について紹介した。しかし、この継続案は現役会員に対して厳しい内容となっており、市議会議員共済会側から大きな反発の声があがった。同共済会は平成21年12月4日の地方議会議員年金制度検討会において「地方議会議員年金制度の見直し案についての本会の考え方」という独自の給付と負担の見直し案を提案した。以下少し長くなるが、全文を引用する。


【地方議会議員年金制度の見直し案についての本会の考え方】

1 議員年金の役割

・ 地方議会議員年金は、地方議会議員の職務の重要性等に鑑み、政策的に設けられた互助年金である。
・ 厚生労働省の調査による老齢年金受給者の年間総収入は、407万円であるが、今回検討会が行った議員年金受給者の生活実態調査によれば、議員年金受給者の年間総収入は、418万円であり、このうち議員年金が4分の1の103万円で、議員年金を除くと年間総収入額は、315万円となり、一般の老齢年金受給者の収入を大幅に下回ることとなる。
・ 議員年金は、現実に、地方議会議員退職者及びその遺族の老後の生活を保障する重要な役割を果たしている。また、地方議会議員が在職中に安心して議員活動に専念するためにも退職後の生活の安定を支えるための制度が不可欠である。このことから議員年金制度の安定的維持が求められる。

2 検討会における本会の主張
市議会議員及び町村議会議員の年金財政が悪化し、平成23年度にその破綻が見込まれるなかで設けられた今回の検討会において、これまで本会としては、次のとおり主張してきた。
・ 市町村議会議員年金財政がこのように悪化した最大の要因は、平成の大合併により極めて短期間のうちに議員年金の担い手である市町村議会議員が4割減少し、年金受給者が2割増加したことによるものである。合併特例法では、このような事態に対し「国は、その健全な運営を図るため必要な措置を講ずる」としており、年金財政悪化の合併影響分については、合併特例法に規定するとおり、国はその責任を果たすべきこと。
・ 平成14年及び平成18年の2度にわたる給付と負担の見直しにより、給付は既に3割引き下げられるとともに、市町村議会議員の掛金率は16%に引き上げられており、給付の削減及び負担は、既に限界に達していること。
・ 議員年金は、原則、議員負担6割、公費負担4割となっているが、このことが議員年金財政の構造が脆弱となる要因となっており、他の公的年金制度と同様、議員負担と公費負担の割合を5対5とすること。
・ 平成の大合併前と比較すると、市町村議会議員数が4割減少したことにより、毎年、議員報酬だけで1,100億円以上の節減となっていること。

3 検討会で示された見直し案についての見解

11月2日の第4回検討会に総務省から示された「給付と負担の見直し案」のA案及びB案、並びに「廃止する場合の考え方」についての本会の見解は次のとおりである。
「A案」について
・ 平成の大合併による年金財政への影響に対する未措置分(約1,883億円)の7割しか措置されていないこと。
・ 掛金率の引上げが1.5%、特別掛金率の引上げが5.5%と議員負担が大きいこと。
・ 給付の引下げが10%と大きいこと。
・ A案では合併影響分が7割しか措置されていないことから、残り3割分を議員負担及び給付の引下げで対応しようとするものであり、これは、合併特例法で定める国の責任を果たしていないこと。

「B案」について
・ 平成の大合併による年金財政への影響については、未措置分(約1,883億円)を全額措置することとし、激変緩和負担分を4.5%から14%へと大幅に引き上げていること。
・ 掛金率が1%、特別掛金率が2.5%引き上げられていること。
・ 給付が5%引き下げられていること。
・ B案では合併影響分を全額措置することとしていることは評価できるが、議員負担と公費負担の6対4の原則を維持することとされており、そのため、掛金率の引上げや給付の引下げが行われていることは、これまでの本会の主張に沿っていないこと。

「廃止する場合の考え方」について
・ 地方議会議員年金を廃止する場合の手立てについては、平成18年の国会議員年金の廃止の例にならうとされていること。
・ 受給資格のある現職議員が年金ではなく一時金を選択した場合の給付額については、国会議員年金の廃止の例にならい、掛金総額の63%ではなく80%とすべきであること。

4 結論
・ 地方議会議員退職後の年金受給者にとって、議員年金はその収入の4分の1を占めており、仮に議員年金がないとしたならばその収入は一般の老齢年金受給者の8割にも満たず、老後の生活に多大な支障が生じることが予想される。このことから、議員年金制度は、基本的に維持されるべきものである。
・ 市町村議会議員年金財政が平成23年度に破綻が想定されるなかで、それを回避し、持続的に安定した給付を可能とするための見直し案としてA案及びB案が示された。
・ A案については、平成の大合併による議員年金財政の悪化について国が果たすべき責務を定めた合併特例法による国の責任を十分に果たさず、それを議員負担及び年金受給者の負担に求めようとして大幅な掛金率の引上げ及び給付の引下げを行おうとするものであり、到底受け入れることはできない。
・ B案については、合併影響分については特例負担金としての激変緩和負担金で措置するものの、なお、掛金の引上げ及び給付の引下げを求めるものである。
平成14年及び平成18年の法改正により、我々市議会議員にとって掛金の負担及び給付の削減は、もはや限界に達しているものであり、さらに負担を求めようとするB案も受け入れることはできない。
・ 議員年金制度を今後安定的に維持していくためには、議員年金財政の構造を基本的に見直すべきであり、本会が主張してきたように、他の公的年金制度と同様、議員負担と公費負担の割合を5対5とすることが必要である。 すなわち、合併影響分については、激変緩和負担金により全額措置するとともに、議員負担と公費負担の原則を6対4から5対5とする 新たな案により、財源不足額を補填することとし、掛金・特別掛金の引上げ及び給付の引下げは行わないこととすべきである。
・ 以上のことから、議員年金制度を今後も維持していくことが望ましいことは言うまでもないが、仮に地方議会議員の年金制度の廃止を行うこととする場合にあっては、国会議員年金の廃止の例にならうものとし、受給資格のある現職議員が年金ではなく一時金を選択した場合の給付額については、掛金総額の63%ではなく80%とすべきである。
以上引用部分


市議会議員共済会案に対する考察

 市議会議員共済会の給付と負担の見直し案の内容を簡潔に要約するならば、市町村議会議員年金の給付と負担の水準を現状のまま維持した上で、全てを公費で措置するべきであるということである。このような考え方は非常に大胆かつ挑戦的であり、年金制度維持を求める関係者をも驚かせた。そこで、この市議会議員共済会の案についていくつかの考察を加える。
まず、市町村議会議員年金財政が悪化した最大の要因を平成の大合併に求めているが、実際の悪化の主因は共済会が然るべき自助努力を行ってこなかったことにある(詳細は第5章2)。なぜなら、平成の大合併が行われる遥か前である昭和40年代に、既に年金財政は破綻の危機に瀕しており、公費負担という例外措置を用いて制度を延命してきた上に、仮に合併がなかった場合でも平成30年度には積立金が枯渇する見通しであったからである(40)。従って、平成の大合併は年金財政の悪化を早めたことは事実であるが、根本的な原因とまでは言えない。
次に、公費負担率を公的年金同様に4割から5割に引き上げることを要求している点についてである。年金制度の沿革の部分で触れたが、議員年金に対する公費負担は例外的措置であり、会員の掛金で賄われることが原則である。従って、4割の公費負担でも制度趣旨を逸脱している可能性が高い。近年は、公費負担率が上昇した結果に着目して議員年金を公的年金に準じて考えようとする動きがあるが、法律解釈の許容範囲を超えている。そのような制度を求めるのであれば、現行法を廃止して、新規の法律に基づいた公的年金制度として再出発しなければならない。
 最後に、市町村合併によって1100億円の議員報酬節減が図れたことに関して、地方議員も身を削ったとし、その額のいくらかを年金財政に措置するように求めている点についてである。市町村合併がどのような経緯で行われたにせよ、そこで節減された費用は全て住民の為に存在するのであって、議員年金の財政を補填するためではない。また、実際に身を削ったのは、地方議員ではなく合併による不便や不利益を覚悟で合併を支持した住民である。

(40)地方議会議員年金制度検討会『資料4 合併がなかったと仮定した場合の財政見通し』「『合併なし試算』結果 市+町村」平成21年10月6日

国民の負担も限界に達している

 後述するが、地方分権改革の推進により、今後20年間の試算は共済会が示したものよりも更に厳しくなることが予測される。激変緩和措置を全額公費で措置し、議員負担と公費負担を公的年金同様5:5にしても、年金財政が行き詰まることは確実である。しかし、本案は、仮に市議会議員共済会案が結実したが、再び収支が悪化した場合どのように対処するのかについてまったく触れていない。公的年金を超える公費負担を国に求めるのだろうか。あるいは、全ての負担を将来の会員に清算してもらうのだろうか。
 同案で最も懸念される点は、自分たちの運営責任には一切触れず、国や国民に対してのみ負担を求めているという点である。後述するが、国民の公費負担率は既に法の許容する範囲を超えており、これ以上税金を投入する論拠は乏しい。このような前提を考慮せず、国民にお願いをする側が一方的に給付の履行を求める姿勢は、望ましいとは言えない。
 国民の負担も既に限界に達していることを念頭に入れなければならない。


市町村議会議員共済会が頑なな理由

 市町村議会議員共済会が自分たちの掛金と給付の見直しに頑なな理由は、近年の急激な待遇悪化によるところが大きい。年度別の掛金総額と給付年額の相関表(図表9)を作成した。回収年数に注目するとわかりやすい。平成15年以降、明らかに制度の優位性が小さくなってきていることがわかる。仮にA案を採用した場合、平成14年度以前の会員との給付水準の差は実質的に3倍以上の開きとなり、現役会員の中には、国民年金よりも回収率の悪い年金制度は受け入れられないという考えを持つ者も多い。
平成14年度末と平成18年度末に駆け込みで退職をした議員がいた理由も、この相関表を見ればよく理解できる。仮に、再び法改正が行われれば、平成22年度末に駆け込み辞任する議員が相当数でてくるだろう。このような現・旧会員間の不均衡は是正されなければならない。

図表9 年度別の掛金総額と給付年額の相関表(理論値)
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※掛金総額×1/9〜3/9
(試算前提)昭和46年度以前は参考値/給付年額は3期12年議員を務めた者が、その退職した年度によって受け取れる年金額/平成19年度以降の負担金率には激変緩和措置を含む/平成23年度以降はA案に基づく値/標準報酬月額40万円の場合(期末手当は5カ月で計算)

都道府県議会議員共済会が平静な理由

 検討会では、市・町村議会共済会が強硬な半面、都道府県議会議員共済会は比較的平静を保っている。その理由は、市町村と違い合併の影響を受けないため、掛金と給付の見直し幅が小さいまま、収支の均衡を図れるためである。例えば、報酬額がほぼ同額の横浜市会議員と神奈川県議会議員の掛金総額と給付年額を比較すると、同じ給付年額を受け取るために、横浜市会議員は、現状で400万円以上、A案が採用された場合は600万円以上、神奈川県議会議員より多くの掛金を支払わなければならない。
 しかし、都道府県議会議員共済会は母体数が47議会と少ないため、各議会の動向が直接的に年金財政に影響を及ぼすという脆弱な基盤の上に成り立っていることも事実である。都道府県財政が厳しい中、大幅な定数・報酬の削減が行われる可能性も否定できず、県同士が合併する可能性もゼロではない。このような場合、比較的健全とされる都道府県議会議員共済会の収支状況も急激に悪化することになる。

図表10 横浜市会議員と神奈川県議会議員の年金給付水準の比較
(在職期間12年の場合の理論値)
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制度を維持する際の留意点

 本書の立場は制度廃止であるが、どのような形であれ、仮に制度を維持するのであれば次の点について確認しなければならないと考える。
 第一に、将来にわたって年金財政が安定的であることをしっかりと示すことである。今までのように、疑問点を残したままに法案を通すようなことは絶対に避けるべきである。国会の問題先送り体質が現在の地方議会議員年金の惨状を拡大させたからに他ならないからである。
 第二に、次に導入される公費負担率を上限とすることである。今まで、公費負担率の上限設定を欠いていたために、共済会が本来なすべき自助努力もなされずに、年金財政の悪化を招いた。これ以上の公費負担の引上げを行わないことを国民に約束することが重要である。今後一切の例外を認めてはならない。共済会に後がないことを示す必要がある。
 第三に、年金財政が破綻した際の責任の所在や制度の清算方法を詳細に定めておくことである。年金財政の試算を誤って年金財政の収支が悪化しても、公費負担を投入できないわけだから、自ずと清算しか道はない。最悪の事態も想定しておくことは不可欠である。予め立法措置をしておけば、憲法29条等の複雑な問題も生じない。

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2010年04月19日

第4章 制度の現状 2.何故、制度を維持するか

2.何故、制度を維持するか
制度維持の3つの理由

 年金基金を運用する共済会や制度の維持を進める政府の関係者は、地方議会議員年金制度が多額の税金投入なくして継続することができないこと、そしてこれ以上の税金投入が理論的・世論的に困難でることを知っている。それにもかかわらず制度維持に執心するのには大きな理由がある。それは既得権者が多いこと、国会議員が既得権者に配慮すること及び政府(総務省)の面子を保つことである。
 現在、年金受給者と有資格者は10万人以上いる。現役会員が約3.8万人であるから、如何にその数が多いかが分かる。従って、制度を廃止するためには、これらの既得権者を説得する必要があり、困難を極める。
 次に、地方議会議員年金は本来地方の自主性によるべき制度であるが、地方公務員等共済組合法の中に定められているため、その改廃を決定するのは国会の役割となっている。即ち、国会議員の過半数が制度廃止を決定すれば、制度は廃止されることになる。しかし、実際には、制度設立から約半世紀に渡り国会議員は超党派でこの制度の延命してきた。国会議員の多くは地方議員の支援を受け選挙を戦っているため、地方議員との摩擦を避けたいという政治的な意図が根底には存在する。
 さらに、同制度を廃止するやり方次第では、所管官庁である総務省の面子をつぶすことになる。「役人は間違わない」という建前が霞が関には存在するからである。

総務大臣答弁の矛盾

 平成21年に政権交代が実現し、自民党を中心とした政権から民主党を中心とした政権に変わった。「地域主権」と「ムダ全廃」を訴えた民主党政権の下では、この地方議会議員年金制度も大幅な見直しをされることが期待された。しかし、原口総務大臣は平成22年3月15日参議院予算委員会において、地方議会議員年金制度を堅持する姿勢を明確にした(38)。但し、この答弁には大きな矛盾が存在した。
 第一に、国家財政の関係から国会議員年金を廃止したとしているが、国会議員年金にかかる国庫負担は年間約20億円であるのに対し、地方議会議員年金制度にかかる地方負担は年間250億円以上である。もちろん、多くの自治体予算の原資は国庫による部分が大きいわけであるから、地方議員の年金制度を廃止する方が遥かに大きな財源効果を生むことになる。
 第二に、原口大臣は「地域主権戦略(原口プラン)」を示して、政府として地域主権を最優先課題として進めることを明確にした。そして、この地域主権の根幹は「地域のことは地域の住民が決める」という住民自治の考え方である。従って、「地域のことを国が決める」地方議会議員年金制度は廃止されることが論理的に最も整合的である。
 以上からも、原口大臣の発言には大きな自己矛盾が存在することがわかる。もちろん、原口大臣もこれらの矛盾点は分かった上で、前述の理由から意図的に制度維持の答弁をしていると思われる。

(38)「国会議員は年金廃止しましたけれども、本当にそれでいいんだろうかと。私はしっかり(地方議会議員年金制度を)支える方向で議論を進めてまいりたいと、こう考えているところでございます。」、山根隆治委員への答弁
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2010年03月28日

第4章 制度の現状 1.厳しい現状と相次ぐ批判

1.厳しい現状と相次ぐ批判
目前に迫る積立金の枯渇


 平成22年現在、年金財政の将来見通しは非常に厳しいものとなっている。掛金率・公費負担率の引き上げ及び給付水準の引き下げを行った、平成14年と平成18年の2回にわたる法改正にも関わらず、市及び町村議会議員共済会の積立金は平成22年度に、都道府県議会議員共済会の積立金は平成33年度に枯渇する見込みである(図表1)。
 このような厳しい見通しを受け、平成20年12月17日に、市議会議員共済会(全国市議会議長会)及び町村議会議員共済会(全国町村議会議長会)の会長は連名で、市町村議会議員が国策として進められた市町村合併に身をもって協力したことを理由に、「市議会議員共済会及び町村議会議員共済会の運営状況等を勘案し、その健全な運営を図るため必要な措置」(市町村合併特例法16条3項)を講ずるよう当時の首相に求めている。つまり、両共済会の積立金が悪化したのは国の責任であり、従って税金を投入して議員年金の安定化を図るべきであるという主張である。
 但し、仮に合併がなかったとしても、平成30年には市及び町村議会議員共済会の積立金は枯渇する見込みであり(34)、早晩破綻する予定であった積立金の救済を全額税金で行うことは、その根拠に欠き、困難であると考えられる。また、この見込みに対して、「合併しなくても赤字が出るということは共済制度そのものが成り立っていない」のではないかという批判がなされている(35)。

図表1 都道府県議会議員共済会及び市・町村議会議員共済会の財政見通し
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出典:地方議会議員年金制度検討会『資料3 財政見通しについて』「財政見通し 都道府県」平成21年5月29日、『資料3 基準試算の更新について』「基準試算(更新後) 市+町村」平成21年10月6日に基づいて筆者が作成

(34)第3回地方議会議員年金制度検討会『合併がなかったと仮定した場合の財政見通し』平成21年10月6日

(35)第3回地方議会議員年金制度検討会における藤田委員の発言,平成21年10月6日

強まる批判

 国会議員年金及び地方議会議員年金は古くから特権的制度との国民の認識があり、常に批判に晒されてきた。平成18年4月1日に国会議員年金は廃止された(実際には完全な廃止ではないことは前述したとおり)ことや、2回にわたる法改正で地方議会議員年金への公費負担率が引き上げられたこともあり、地方議会議員年金制度に対する批判は年々強まっている。
 批判の中身は多岐にわたるが、主に被用者年金と比較して優遇されているという趣旨のものが多い。しかし、批判の中には明らかな誤解に基づくものや意図的に微細な事例を誇張したものもあり、適正を欠いているものも少なくない(これらの批判に対する検討は前述した通りである)。但し、これらを差し引いても国民の感情的な批判は依然として存在する。

1人が複数人を支える現状

 年金制度の状況を図る指標として成熟度がある。成熟度とは、年金の成熟度合いを示す指標で、一般的に被保険者数に対する年金受給権者数の割合で表わされる。平成19年度における各共済会の成熟度(遺族年金受給者を含む)は、都道府県議会共済会が131.6%、市議会議員共済会が286.1%、町村議会議員共済会が226.7%である(図表2)。特に市議会議員共済会においては、現職議員1人で約3人の年金受給者を支えていることになる。
また、地方公務員共済組合連合会の調査によると同年度における公的年金の成熟度は、厚生年金が36.4%、国家公務員共済年金が61.3%、地方公務員共済年金が55.9%、国民年金が37.5%となっている。公的年金と比較して、議員年金の成熟度の高さが窺える。制度が既に破綻していると言われる所以である。
さらに、このような状況は、後述する掛金率の上昇もあり、年金受給者と現職議員の間に大きな不公平感を生んでいる上に、地方議会議員年金制度を廃止する1つの論拠ともなっている。

図表2 会員数、年金受給者数及び成熟度の推移
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(注1)「年金受給者」には、「退職年金」「遺族年金」を含む。
(注2)「退職年金」には若年停止者及び在職停止者を含む。
出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』を基に筆者が作成


掛金率と負担金率の上昇と給付水準の低下

 地方議会議員年金の収入は、現職議員からの掛金・特別掛金及び自治体の負担金よりなる。図表3が示すように、制度導入当初の昭和37年は、掛金のみで掛金率は5/100であった。昭和47年4月より自治体による負担金が導入され、負担金率は1/100、掛金率は9/100となった。平成7年4月には、期末手当を対象とした特別掛金が導入され、特別掛金率5/1000、掛金率11/100、負担金率9.5/100となった。その後、平成15年4月の変更で、比較的収支予測の厳しい市議会議員及び町村議会議員共済会と都道府県議会議員共済会の掛金率等に相違が生じ、平成20年4月からは、市及び町村議会議員共済会においては、掛金率が16/100(都道府県議会議員共済会は13/100)、特別掛金率が7.5/100(同2/100)、負担金率が16.5/100(同10/100)となっている。特に市町村議会議員の掛金率の上昇は著しく、生活を報酬に依る専業議員の多くは相当な負担感を持っていると考えられる。
 現職議員と自治体の負担が増加する一方で、給付水準は平成15年4月に2割、平成19年4月に12.5%と引き下げられることとなった。特に平成15年の法改正については、制度改正前の議員歴を有する者は1割の引き下げとされたことから、既に年金受給資格を得ておりかつ引退を決めていた議員の一部において、平成15年4月の統一地方選挙直前の3月に「駆け込み辞職」をする現象がみられ、批判が集まった。なお、この間退職一時金の支給額も同様に引き下げられている。

図表3 掛金及び負担金率の推移
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(注)負担金率には市町村合併の影響を激変緩和するための措置分が含まれる。措置分については、平成19年度は市が3.5/100、町村が4.5/100、20年度以降は市・町村ともに4.5/100。10年間の時限措置で、その後5年間で漸減。
出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』に基づいて筆者が作成

低下する運用利回り

 地方議会議員年金も公的年金と同様に積立金の運用収入を得ているが、その平均運用利回りは著しく低下している(図表4)。最盛期である昭和55年の平均運用利回りは、都道府県議会議員共済会が8.10%、市議会議員共済会が8.72%、町村議会議員共済会が7.91%であったのに対し、平成19年度にはそれぞれ2.98%、1.58%、0.39%に低下している(36)。特に市及び町村議会議員共済会における利回りが低いのは、積立金の枯渇が目前に迫り、積立金の長期的な運用が困難なことが一因である。原資である積立金の減少により、運用収入による収支の健全化はほとんど期待できない。なお、積立金は国債等によって安全な運用をされている(37)。

図表4 平均運用利回り
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出典:地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書(平成21年2月)』を基に筆者が作成
(36)地方議会議員年金制度に関する研究会『地方議会議員年金制度に関する研究会報告書』平成21年2月,p39

(37)「共済会の業務上の余裕金は、総務省例で定めるところにより、安全かつ効率的な方法により運用しなければならない」(法157条)
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2010年02月21日

第3章 制度の比較 2.米国の地方議員年金の現状

国際的制度比較論の重要性

 あらゆる制度設計に言えることであるが、諸外国の制度を比較検証することは必要不可欠である。国民年金や被用者年金における国会の論戦においても、国際的な比較に基づいた議論が展開されている。しかし、地方議会議員互助年金制度の導入時にも同制度が地方公務員等共済組合法に合流する時にも、地方議会議員年金制度の国際的な制度比較をまったく行わず、国会議員互助年金法に準じて、当事者である地方議会議員等の意向を受ける形で制度が制定されている。近年も共済会や総務省を中心として地方議会議員年金制度における研究会や検討会が数回に渡り開催されているが、その傾向は変わらない。
 全ての地方議会議員が強制加入である独自の地方議会議員年金制度を用意している国は、世界でも日本だけである。日本の市町村にあたる基礎自治体レベルでは、議員職を低額な費用弁償で務める者が多く、地方議会議員年金制度が存在する自治体は多くない。そこで、筆者が調査し得た事例を中心に米国の地方議会議員年金制度の現状について紹介する(22)。

(22)なお、欧州も含めた地方議会議員年金制度の本格的な国際比較については、渡部記安氏の『国際比較からの考察 中央議会(国会)・地方議会議員年金制度』(株式会社朝陽会)が大変詳しいので参照されたい。


多様な米国の地方自治制度

 アメリカ合衆国は、50の州と1つの特別区からなる連邦国家である。連邦政府は、合衆国憲法第1条第8節に限定列挙された18項目以外の権限を持たないとされ、各州に大幅な権限が存する。従って、地方自治制度も各州の憲法や法律で定められるため、非常に多様な地方自治制度が存在する。
 大きな傾向としては、州の下にカウンティ(county)という広域自治体が存在し、カウンティの下にシティ(city)、バラー(borough)、ヴィレッジ(village)といった日本でいう基礎自治体が存在する。これらを総称して自治体(municipality)と呼び、法人化区域(incorporated area)とも表現される。しかし、全ての地域に自治体が存在するわけではなく、自治体が存在しない未法人化区域(unincorporated area)も存在する。未法人化区域の行政サーヴィスについてはカウンティが行っている。以上は概括的な傾向であるが、詳細を見てみると州ごとに様々な違いがみられることは留意されたい。
 なお、2002年時点において、カウンティは3,034、自治体は19,429存在する(23)。総務省の発表によると平成22年3月末の日本の市町村数は約1,750であり、米国の自治体の多さが際立っていることがわかる。

(23)U.S. Census Bureau, Statistical Abstract of the United States: 2009, Table No.410, p.259なお、学校区(school district)及び特定区(special district)は除いている。

米国の地方議会の現状

 米国の地方議会議員はボランティアであるという表現がしばしばされるが、実際日本の基礎自治体にあたる自治体の議員報酬は低額である。例えば、米国の地方議会議員は、「大都市の専門職議員に対する報酬は別として、大半の『非常勤』議員の報酬はゼロないし極めて少額しか支給されず、せいぜい出席当日の旅費が支給される程度に過ぎない(24)」。これに対して、日本の地方議員に関して、町村議会議員の平均報酬年額は357万円(25)、市議会議員の平均報酬年額は715万円(26)である。議会によってはその他に役職手当や費用弁償を別途手当てしている。
 次に、州議会議員の報酬は、専業議員によって構成されるとされる10の州議会の議員の平均報酬年額は68,599ドル(約617万円)であるが、非専業議員で構成されるとされる17の州議会の議員の平均報酬年額は15,984ドル(約143万円)である。一方、日本の都道府県議会議員の平均報酬年額は1,370万円(27)であり、議会によっては報酬に加えて役職手当や費用弁償等、任期中に数百万円の手当が支給される議会もある。
 但し、米国の地方議会議員は、報酬が低額であるが、職責に対していい加減というわけではない。「人口2500人以上の自治体に対するICMAの調査(1996年)によれば、(基礎自治体)議会の開催回数は、月2回が全体の3分の2強(69.1%)となっており、月3回以上が10%強で、そのうち週1回ないしそれ以上開催するところは7%となっているに過ぎないが、人口50万人以上100万人未満の都市では71.4%、25万人以上50万人未満では56%が毎週議会を開いている(28)」。月2回程度の開催とは大変少ない印象を受けるかもしれないが、議員数はたいてい5~7名程度と少なく、議場が住民に開かれており、議員全てが議論に参加するため、議会活動において各議員にかかる負担は大きい。実際、筆者が面談した議員は総じて職務に対して熱心であった。
 これに対して、日本の町村議会の平均会期日数は41.2日(29)、市議会で76.2日(30)である。しかし、会期日数とは初日から最終日までの期間を指し、実際の開催日数を表すわけではない。従って、その間の休会日等を除けば、実際に議員が出席する会議はその半分程度あり、発言をする等議事に主体的に関わるのは更にその半分程度である。また、その発言の機会すら放棄して、任期中ほとんど発言しない議員も少なくない。議員は20〜40名程度であり、住民の発言等は基本的に許されておらず、議員同士の議論はほとんど存在しない。従って、議会活動における各議員の負担は米国のそれに比べて少ない。
 また、州議会は完全な立法機関であり、州議会議員の職責は都道府県議会議員のそれよりも大きい。立法作業と議論が議会活動の主体であり、議員にも相当な役割が期待されるため、各議員はスタッフを抱えて、日夜職務に励んでいる。
 このような客観的な比較からも、米国の地方議員の仕事量は、日本のそれに勝ることはあっても決して劣ることはない。

(24)小滝敏之『アメリカの地方自治』2004年,p241

(25)全国町村議会議長会『第54回町村議会実態調査』2009年,p13「13 議員報酬・委員長報酬・監査委員報酬・特別職報酬等審議会(表26〜30)」の平均報酬月額を基準に筆者が算出(期末手当は5カ月分)

(26)全国市町村議会議長会『市議会議員報酬に関する調査結果』2007年,p2「1.全国「802 市」の市議会議員の平均報酬月額」の平均報酬月額を基準に筆者が算出(期末手当は5カ月分)

(27)総務省『平成20年 地方公務員給与の実態』2008年,「第9表特別職に属する職員の定数及び平均給料(報酬)月額」平均報酬月額を基準に筆者が算出(期末手当は5カ月分)

(28)小滝敏之『アメリカの地方自治』2004年,p241

(29)全国町村議会議長会『第54回町村議会実態調査』2009年,p21

(30)全国市議会議長会『市議会の活動に関する実態調査』2008年,p7

州議会議員の年金制度

 州議会議員の年金制度は、各州が定めているために多様である。全米50州の内、州議会議員に対する年金制度を定めているのは40州、年金制度を定めていないのは8州、かつては年金制度が存在したが廃止になったのは2州である。年金制度を定めている40州の内、強制加入の制度と選択加入の割合は半分の20州ずつであった(31)。
 年金制度の制度設計については、州議会議員のみを対象にした制度もあるし、一般の州職員の制度に加入する制度もある。受給資格は、3年間で得られる州(Pennsylvania州)もある一方で、10年間を要する州(Alaska州等)もある。支給開始年齢は、60〜65歳が最も多いが、条件によっては50歳から支給を受けることができる州もある。
 現役時代の掛金率は、負担がない州(Missouri州等)から15%(Nevada州)まで様々であるが、5〜10%の間が比較的多い。また、年間100〜500ドルといったように定額拠出金を採用する州もある(New Mexico州)。よって、支給額を算出する方法も各州で異なる。
例えば、Pennsylvania州の年金算出方式に従って、12年間州議会議員を務めた場合の年金額を試算すると、年間25,072ドル(約225万円)となる。また、Nevada州で同様の場合で試算すると、年間3,600ドル(約32万円)となる。但し、Pennsylvania州の現役時代の報酬は年額69,647ドル(約627万円)であり、Nevada州の報酬は130ドル(約1.2万円)/日(最大で60日)である(32)。
 以上から、州議会議員に対する年金制度は多様であり、日本の地方議会議員年金制度のように一義的に説明することはできない。但し、年金制度を採用する州でもしない州でも、その判断は州民によるものであるという点が重要である。

(31)THE BOOK OF THE STATES 2009 EDITION VOLUME 41

(32)㈶自治体国際化協会『CLARE REPORT No.299 米国の州議会の概要』2007年

米国の基礎自治体における地方議会議員年金制度

 前述したように米国の自治体数は大変多い。また、日本の基礎自治体が地方自治法の下画一的な自治体運営を行っているのとは対照的に、それぞれの自治体が住民自治によって様々な自治体運営を選択している。従って、米国の基礎自治体における議会年金制度の現状を把握することは不可能といえる。但し、傾向としては地方議会議員が低額な報酬でボランティア的に活動するため、年金制度を保有している自治体は例外である。以下、地方議会議員年金制度が確認できた事例の内のいくつかを紹介する。
まずは、ニューヨーク市について紹介する。「ニューヨーク市には、市議会議員を対象とした特有の年金制度はない。ただし、同市議会議員は、市職員が加入している年金制度であるNYCERB に任意で加入することができる。加入した場合の取り扱いについては、原則的に市職員に対する規定が適用(33)」される。
 ニューヨーク市議会議員の報酬は、年額112,500ドル(約1012万円)であり、米国の基礎自治体議会議員の中では高額な部類に入る。
 次に、ロードアイランド州の自治体の事例を紹介する。ロードアイランド州の基礎自治体議会の調査資料である「City & Town Council Salary and Fringe Benefits Survey(July 2006)」によると、ロードアイランド州の39の基礎自治体議会の内、16の自治体で議員に対する年金制度を設けている。年金制度がある議会の大半は、既存の自治体職員用の年金制度に参加する形式をとっている。

議員年金は住民自治の賜物

 以上のように、米国には、日本のような全国一律の地方議会議員年金制度は存在しない。また、州議会議員やごく一部の地方議員において議員年金制度が存在するが、特に基礎自治体議会の大半は制度自体が存在しない。内容も日本のように一律的な制度設計に基づくものではなく、議員の職責を加味した内容となっている。また、年金を支給する自治体であっても、導入の是非は住民によって判断されており、住民の意向によって廃止することも可能である。
 まさに、米国の議員年金は「住民自治の賜物」と言える。

(33)㈶自治体国際化協会『地方公務員における年金制度及び健康保険制度』2008年
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2010年02月05日

第3章 制度の比較 1.国会議員年金制度(平成18年に廃止)

1.国会議員年金制度(平成18年に廃止)
制度の沿革


 国会議員の年金制度は、正式には国会議員互助年金という。国会法36条(21)に基づいて国会議員互助年金法で定められた。
 互助年金制度ということで発足し、昭和33年4月11日議会運営委員会における同法提案者による説明の中では「国会議員の互助の精神を根本といたしまして、努めて国庫の財政的負担に依存することを避けまして、議員全員の平等の醵出(きょしゅつ)によって、長年在職した同僚の退職年金制度をまかなうことを基本方針」とする説明がされている。しかし、初年度は黒字となったものの、月額歳費に対して3/100という負担のみで年金財政を賄うことはできず、翌々年度には国庫負担金が投入されている。最終的には国庫負担率が7割程度になった。
同制度は、世論の大きな批判を受け、平成18年2月3日に国会議員互助年金法を廃止する法律が可決され、同年4月1日に国会議員互助年金法は廃止された。但し、「廃止」とは、全ての給付が一切廃止されたことを意味するわけではなく、以下の経過措置が設けられた。
既に年金を受給している者に対しては、給付額を4〜10%減額されるが、そのまま年金給付を受けられることとされた(国会議員互助年金法を廃止する法律3条)。現職議員で10年未満の在職期間を有する者は、納付金額の80%を退職時に支給することとされた(同法13条)。現職議員で10年以上の在職期間を有する者は、退職一時金を退職時に受け取るか、給付額を15%減額した額で年金を受け取るかを選択できることとされた(同法9条)。
以上のように、国会議員互助年金法は廃止されたが、最後の既得権者がいなくなるまで制度自体は継続することとなった。最後の既得権者がいなくなるのは40年以上先のことである。
なお、国会議員の年金制度は、多くの国で見られ、主要先進国はほぼ全ての国がなんらかの年金制度を有している。従って、日本は、職務に専門性と専業性が求められる国会議員に年金制度がなく、素人的かつ非常勤の地方議員には年金制度がある、世界的に見れば非常に特殊な国となった。

制度の概要

 国会議員年金の給付は、互助年金と互助一時金の2種類ある。互助年金には、普通退職年金、公務傷病年金及び遺族扶助年金があり、互助一時金には退職一時金及び遺族一時金がある(国会議員互助年金法2条)。
 普通退職年金(同法9条)は、在職期間が10年で退職した者に対して支給される。10年の在職期間で退職した者の年金額は、退職時の歳費の年額に50/150を乗じて得た額とされる。その後、1年在職期間が増えるごとに乗数に1/150が加算される。例えば、制度廃止直前における実際の支給額は、10年在職者で412万円、30年在職者で576.8万円となる。
 公務傷病年金(同法10条)は、国会議員が公務に基づいて傷病に因り重度障害の状態となって退職した場合に給付され、在職10年未満の者にも支給される。
 遺族扶助年金(同法19条)は、普通退職年金又は公務傷病年金の有資格者が死亡した場合、その遺族に対して給付される。その額は原則として退職年金額の1/2である。
 退職一時金(同法10条の2)は、国会議員が在職期間三年以上十年未満で退職したときに支給される。また、遺族一時金(同法19条の3)は、前述の退職一時金の有資格者が死亡した場合に、その遺族に対して同程度の額が支給される。例えば、制度廃止前の退職一時金の額は、在職年数が3年の場合296万円であり、在職期間が9年の場合889万円である。

地方議員年金との相違

 地方議会議員互助年金制度は、国会議員互助年金制度に準じて制度設計されたため、基本的な内容は類似している。大きな違いとしては、在職期間要件が、地方議会議員の場合12年で、国会議員の場合10年であることや、掛金やそれに対する給付額が挙げられる。
 近年、地方議会議員年金制度は社会保険方式であり、国会議員年金制度は恩給方式で運営されていたという点で異なるという意見があるが、この点は誤認である。なぜならば、昭和33年4月9日衆議院本会議での国会議員互助年金制度の提案理由において、「議員相互の互助の精神をその根本といたしたのでございます。すなわち、本制度は、年金の全部を国庫の負担とする建前をとらないで、醵出制によって、議員の受ける退職年金は議員が納付する掛金をもってまかない得るようにいたしたのであります」と明言されており、この考え方は加入者が一定期間保険料を拠出し、それに応じて年金給付を受ける社会保険方式を原則とする。さらに、財源としては税財源ではなく会員の掛金である社会保険財源を念頭に置いている。平成18年5月16日衆議院総務委員会において初めて参考人が恩給方式である言及を行っているが、これは国会議員互助年金制度が結果的に7割という公費負担率で運営されていたという現象を表現したに過ぎず、国会議員互助年金制度が恩給制度であるわけではない。
 さらに、公費負担が地方議会議員年金の場合4割強、国会議員互助年金の場合7割強とされることに違いがあると指摘されることもあるが、国庫負担か地方負担かの違いはありながらも、国民の負担であるという点では相違はなく、割合の多寡をもって両制度の根本的な相違とすることは適当ではない。

(21)「議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。」
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2010年01月29日

第2章 制度の概要 4.議員年金は本当に『特権的』制度か

4.議員年金は本当に『特権的』制度か
批判の中身


 制度導入以来、地方議会議員年金制度には多くの批判がなされてきた。特に公的年金との比較において、地方議会議員年金の特異性に着目するものが多い。しかし、批判の中には根拠が薄弱なものも少なくなく、逆に地方議会議員年金制度についての適正な議論を阻害していることもある。地方議会議員年金を考える際に、便宜的に公的年金と比較するが、根本的な制度の違いが存在するために、常に適正な比較にならないことも念頭に置かれたい。


受給資格期間の短さ

 受給資格期間が、国民年金が25年であるのに対して、地方議会議員年金は12年である。この為、国民年金よりも短い期間で受給資格を得ることは優遇されているという批判がある。
 まず、地方議会議員は国民年金の加入義務があり、地方議会議員年金の掛金とは別に、国民年金の掛金を支払っている。従って、基礎年金である国民年金と地方議会議員年金の受給資格期間を単純に比較することは妥当ではない。このような批判は年金の給付水準も掛金に比して高く、国民年金が任意加入であった時代には成り立つが、現行制度下では、議員も25年間以上の国民年金の保険料を支払うことが期待されるわけだから、批判としての論拠に乏しい。
 また、それでも国民年金を支払わない議員もいることも想定されるわけであるが、前述したように現在の地方議会議員年金の議員負担割合は公的年金よりも特別低いわけではなく、むしろ国民年金の保険料を支払わないことは、自ら老後を不安定にする選択であり、特殊な事例を除いて国民年金の保険料を掛けないという動機は働きにくい。議員の中には、地方議会議員年金制度に対する不信から国民年金基金に加入している者もいる(受給要件の1つは、国民年金の保険料を納めていること)。
 逆に、地方議会議員年金を基礎年金の上乗せであると擬制し、厚生年金の2階建て部分と比較すると、他の年金制度では基礎年金の保険料を25年以上納めていれば、その支払期間(一年未満は除く)に関わらず、支払った分の年金は加算されるのに対し、基礎年金の受給要件を満たしても、12年の受給期間が必要とされるため、見方によっては冷遇されているともいえる(それを補完するために退職一時金が設けられたが、退職一時金は議員の老後保障にはなり得ない)。さらに、12年という受給資格期間は、落選という自らの意図しない要件によって、老後保障である年金の受給が制限されるという観点からはむしろ問題視されるべきである。
 以上より、地方議会議員年金の受給要件として、国民年金の受給要件の充足を要件とすることは望ましいが、受給資格期間の短さをもって地方議会議員年金が特権的であるという批判は当てはまらない。

被用者年金との重複需給が可能

 被用者年金と重複加入ができることに対する批判がある。しかし、昭和49年の法改正により被用者年金との調整措置が立法化されており、重複期間における公費負担相当分は控除される仕組みが導入された(法161条の2)。また、平成14年法改正により、重複期間の控除の割合が25%から40%に引き上げられた。これは当時の公費負担率である4割程度とほぼ符合する。従って、被用者年金との重複期間の存在によって、議員は自己が支払った掛金以上の恩恵を受けているわけではないので、この批判は当てはまらない。

議員年金間の重複需給が可能

 市町村議会議員を12年以上、都道府県議会議員を12年以上務めると、両方の地方議会議員年金を受給できるという批判がある。さらに、公的年金やかつての国会議員年金も含めて、年金の二重・三重取りという風に揶揄される。
 確かに、地方議員という枠組みで括ると、各共済会を分ける必然性は乏しく、特権的である。しかし、平成21年3月31日現在、2つ以上の区分の地方議会議員共済会の年金受給者である者は、県・市で321名、県・町村で43名、合計で364名であり、受給者全体に占める割合は0.59%である(20)。つまり、重複受給者は統計的には相当な例外であり、この事例を一事が万事的に制度批判として用いることは妥当性を欠く。
 また、例えば市町村議会議員を8年、都道府県議会議員を8年務めて引退した場合、逆に年金を受け取ることはできず、掛金の4割強が掛捨てになる。統計的には、年金の重複需給者の数よりも、このような制度の不備によって年金を受給できない者の数の方が圧倒的に多く、これら掛捨て者の犠牲によって年金財政が支えられていることも事実である。重複需給が問題であることは否定しないが、同様に市町村議会議員及び都道府県議会議員を相当年数務めてきた者の掛金が掛捨てになっている現状にも光を当てなければならない。

退職一時金の存在

 公的年金と違い、退職一時金(法161条の3)があることが批判される。公的年金の加入期間が25年未満の場合、原則退職一時金などの制度で掛金が還付される仕組みがないことと比較しているものと思われる。
 しかし、公的年金の保険料の支払いは本人が望めばできるが、議員は落選という不確定な要素に左右されるため、本人が望んでも12年間掛金を掛け続けられない場合もある。また、退職一時金を導入する昭和40年の法改正前までは、任期が12年に満たない者の掛金は掛捨てであり、実際に多くの掛捨て者が出ていた。
 地方議会議員年金の目的が議員の老後保障にあるならば、他の公的年金と同様に加入期間を通算する仕組みがあってしかるべきである。従って、退職一時金は必ずしも議員を優遇する制度とは言えず、現状の年金制度体系の不備を補うための苦肉の策であるといえる。

転給制度の存在

 地方議会議員年金制度には、共済年金同様に転給制度があり、共済年金を除いた他の年金制度よりも優遇されているという批判がある。被用者年金制度の一元化の議論の中で、共済年金の転給制度の廃止の方向性も定まっており、この点については、廃止することが妥当である。
なお、転給制度とは、遺族年金受給者の死亡時に、所得等の一定条件を満たした同・後順位の遺族がいた場合、その最優先順位者に受給権が引き継がれる制度である。

(20)第2回地方議会議員年金制度検討会『資料1:地方議会議員年金制度の現状について』平成21年5月29日,p11
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2010年01月21日

第2章 制度の概要 3.どんな給付があるのか

3.どんな給付があるのか
退職年金(法161条)

 退職年金は地方議会議員が在職12年以上で退職したときに支給される(法161条)。但し、65歳以上であることが条件である(法164条)。また、共済給付金の基礎となるべき在職期間の計算については、都道府県、市又は町村の議会の区分ごと(法159条)に行う。
 退職年金の年額は以下の式で計算できる(法161条2項)。

平均報酬年額(18)×{35/150+0.7/150×(在職年数−12)}

また、在職期間30年を超える者に給する退職年金の年額は、在職期間30年として計算する(法161条3項)。さらに、在職期間のうち政令で定める年金制度(19)の適用を受ける期間(重複期間)を有する地方議会議員に係る退職年金の年額は、第161条2項で算出した退職年金の年額から、重複期間を在職期間で除して得た割合を乗じて得た金額の100分の40に相当する金額を控除した金額とし(法161条の2)、被用者年金との重複期間の調整を図っている。

(18)退職の日の属する月以前の地方議会議員であった期間12年間における掛金の標準となった標準報酬月額の総額を12で除して得た額

(19)厚生年金保険、国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合(団体共済のみ)等

退職一時金(法161条の3)

 地方議会議員が在職3年以上12年未満で退職した場合、退職一時金が支給される(法161条の3)。退職一時金の額は、在職期間に係る掛金の総額に相当する額に以下の割合を乗じて得た金額となる(法161条の3 2項)。

 @在職期間が3年以上4年以下の者  100分の49
 A在職期間が4年を超え8年以下の者  100分の56
 B在職期間が8年を超え12年未満の者 100分の63

公務傷病年金(法162条)

 公務傷病年金は、地方議会議員が、当該共済会を組織する地方議会議員である間における公務に基づく傷病により重度障害の状態となり退職したとき、又は退職3年以内に当該公務に基づく傷病により重度障害の状態となった場合に給付される(法162条)。

遺族年金・遺族一時金(法163条、163条の3)

 遺族年金は、在職12年以上の地方議会議員が死亡した時及び退職年金又は公務諸病年金の受給をしていた者が死亡した時に、その遺族に支給される(法163条)。
 遺族一時金は、在職3年以上12年未満の地方議会議員が死亡した時に、退職一時金の相当額が遺族に支給される(法163条の3)。
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第2章 制度の概要 2.誰が運用しているのか

2.誰が運用しているのか
地方議会議員共済会の概要(法151条)

 地方議会議員の年金に係る業務を行うのが、地方議会議員共済会である。共済会には、都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会、町村議会議員共済会の3つがある(法151条)。この内、市及び町村議会議員共済会は、平成18年より財政単位が一元化されている。なお、事務局の職員は、各議長会(都道府県議会議長会、市議会議員議長会、町村議会議員議長会)の職員が出向している。

共済会の定款・登記(法152〜154条)

 共済会は、法律で定められた9つの事項を定款で定めなければならない(法152条1項)。そして、定款の変更には総務大臣の許可が必要とされる(同条2項)。また、政令に基づく登記が義務付けられている(法153条)。さらに、住所や代表者の行為についての損害賠償責任について、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条及び78条の準用を受ける。

代議員会(法155条)

 共済会には代議員会が設置される(法155条1項)。代議員会は共済会の議決機関であり、各共済会では、定款で議長職にあるものの中から選任することとしている。@定款の変更、A事業計画書の作成及び定款で定める重要な変更並びに決算報告書の認定、B訴訟の提起及び和解、Cその他共済会の業務に関する重要事項で定款に定めるものは代議員会の議決を経ることが義務付けられている(法155条2項)。
 代議員の選出人数や選出方法は定款で定められているため各共済会で異なるが、自治体議会の議長が代議員を務めるという点は共通する。例えば、都道府県議会議員共済会では、47都道府県議会の議長が代議員となる。

役員(法156条)

 共済会に役員として、会長1人、副会長1人、理事10人以内及び監事2人以内を置く(法156条)ことになっている。会長は共済会を代表してその業務を執行する(同条2項)。役員の数や選出方法の詳細については各共済会の定款で定められている。会長は、各議長会の会長が充てられ、副会長は代議員から選ばれた理事により互選する。また、理事の内1人は各議長会の事務総長が充てられ、また監事の内の1人は学識経験者から選ばれる。
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2010年01月15日

第2章 制度の概要 1.地方議会議員年金とは

1.地方議会議員年金とは
地方議会議員年金の法的根拠

 制度の沿革において触れたが、地方議会議員の年金制度の根拠法は地方公務員等共済組合法(以下「法」)である。本法の第11章の151条から173条において、地方議会議員の年金制度について規定されている。
 地方議会議員の年金制度は、強制加入の制度(17)であり、法定の地方議会議員共済会がその給付等の事務執行にあたる。共済会の行う給付の種類として、退職年金、退職一時金、公務傷病年金、遺族年金及び遺族一時金(以上を共済給付金と呼ぶ)がある。

(17)強制加入の明文は存在しないため、法151条及び166条から推定される。

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2010年01月08日

第1章制度の沿革 6.国民負担は1兆円以上

6.国民負担は1兆円以上
政権交代の影響

 平成21年8月に、政権交代が起こり、政権が自民党から民主党を中心とする政権に変わった。東京都議会において民主党会派が制度廃止の意見書の提出を試みるなど、民主党系の地方議員の多くが制度廃止を訴えていたことや、民主党が主張する地域主権と同制度が理論的に両立し得ないこと等を勘案すると、地方議会議員年金制度も当然のことながら廃止されるものと思われた。まさに、民主党政権による政治主導の真価が試される事案と言えた。
 しかし、原口一博総務大臣は、平成21年11月19日参議院内閣委員会において同制度の継続を示唆し(15)、平成22年3月15日参議院予算委員会において同制度の継続の姿勢を明確にした(16)。但し、総務大臣は地方自治の重要性を繰り返し強調する一方で、国民負担が増加する点については触れることはなかった。

(15)「議員年金につきましても、非常に外部的な要因で枯渇をしている。合併、今おっしゃった、そういうものがございますので、私たちは、中央政府としても、民主主義の学校と言われる地方自治をしっかりと支えていくその責務を負っているというふうに思います。」

(16)「地方議会は大変、民主主義の学校、とても大事な役割を果たしておりまして、地方議会議員の職務の重要性を勘案してこの地方議会年金制度は政策的に設けられたものでございまして、これは、私の思いとすると、何とかして存続させたいと。」

国民の民意はどこへ

 地方議会議員年金制度に関わる法改正は、統一地方選挙の前年度の春になされるのが通例であるが、平成22年度春には法改正はなされなかった。同年7月に開催される参議院選挙への影響を懸念しての対応と考えられる。
 本来であれば、参議院選挙は今後1兆円以上の負担を強いる可能性がある同制度の存廃について国民の民意を問うよい機会であるが、各政党のマニフェストにも、同制度について触れているものは存在しなかった。国民不在のまま、同制度は継続されようとしている。
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2009年12月30日

第1章制度の沿革 5遅すぎた構造改革

5.遅すぎた構造改革

初の給付水準の引き下げ(現役会員のみ)

 平成13年に、都道府県議会議員共済会及び市議会議員共済会は平成24年度に、町村議会議員共済会は平成19年度に積立金が枯渇する見込みとなった(12)。確かに、市・町村議会議員共済会の財政悪化については市町村合併の影響も大きかった。しかし、合併がなかった都道府県議会議員共済会も同様な見通しとなったことから、積立金の枯渇については地方議会議員年金制度の構造的な問題が根底にある。
そこで、政府は総務省内に「地方議会議員年金制度検討会」を設置し、地方議会議員年金制度の見直しを検討させた。平成14年2月に同検討会の報告書が提出され、これを受け長期的にわたり安定的に年金給付を確保するための立法作業に入り、平成14年4月第154回国会において改正案は主要政党全ての賛成により可決され、平成15年4月1日より改正法は施行された。この法改正によって初めて現役会員の給付水準の引き下げが行われたが、既裁定者(OB会員とその家族等)に対する給付削減は一切行われなかった。年金財政が相当逼迫しているにも関わらず、既裁定者の給付の引き下げを行わなかったことは、後年の国会審議において指摘を受けることになる(13)。
 平成14年4月25日参議院総務委員会において、片山虎之助総務大臣は法改正によって20年後の平成35年まで制度が持つことを明言しているが、数年も立たずに見込み違いが明らかになり、更なる法改正の必要性が生じている。
 平成14年の法改正の主な内容は、@平成15年4月より給付水準を2割引き下げること(制度改正前の議員歴を有する者は1割)、A掛金率及び負担金率を、都道府県議会議員は12/100・10/100に、市議会議員は13/100・10.5/100に、町村議会議員は15/100・11/100に各々引き上げること、B年金額の算定基礎となる標準報酬年額の算出方法の変更、C高額所得者に対する退職年金の一部支給停止基準額を217.6万円以上とし、対象となる所得金額を、課税総所得金額700万円を超える場合とすること等である。
 @の改正については、平成14年3月に退職年金の給付水準の低下を嫌った一部の議員による駆け込み辞職が行われ、世間の批判の的となった。

(12)地方議会議員年金制度検討会『地方議会議員年金制度検討会報告書』平成14年2月

(13)平成18年5月16日衆議院総務委員会において、富田委員は「平成14年のときと平成18年の現在と、この大法廷判決はもともとあったわけですから、この要件に当てはめて、既裁定のOB議員の皆さんたちに一割カットするというのは14年のときにもできたと思うんですが、それをなぜしなくて、18年になって、ここに至って一割給付を引き下げるというふうになったのか。」と指摘している。

更なる給付水準の引き下げ(既裁定者も含む)

 平成14年の法改正にも関わらず、特に市・町村議会議員共済会の収支状況は改善せず、当初の見込みの「20年後」ではなく、「5年後」の平成20年度に積立金が枯渇する見込みとなった。度重なる試算誤りは、当事者である現役地方議員からも批判を受けることとなり、平成17年に総務省内に設置した「地方議会議員年金制度検討会」が平成18年2月に提出した報告書に基づいて、初めて既裁定者の給付水準に踏み込んだ法改正を行うことになった。衆議院においては全会一致であった。
 平成18年6月6日参議院総務委員会において、小笠原倫明政府参考人は法改正によって以後20年間年金財政が維持されると明言した(14)。しかし、平成23年に市・町村議会議員共済会の積立金が再び枯渇する見込みとなった。再び政府の見込み違いが生じることとなり、当事者である地方議員からも政府の信用性を問う声が増えてきた。
 平成18年の法改正の主な内容は、@平成19年4月より給付水準を12.5%引き下げること、A掛金率と負担金率を、都道府県議会議員は「13/100(負担金は据え置き)」に、市議会議員は「16/100」・「12/100」に、町村議会議員は「16/100」・「12/100」に各々引き上げること、また特別掛金も市町村議会議員率「7.5/100」に引き上げること、B市町村合併に伴う激変緩和措置(合併特例法16条3項)として市町村の負担金率に「4.5/100」を加算すること、C高額所得者に対する退職年金の一部支給停止基準額を190.4万円以上とし、対象となる所得金額を、課税総所得金額500万円を超える場合とすること、D在職加算年数を50年から30年にすること、E既裁定者の年金給付水準を10%引き下げること等である。

(14)「この法案お認めいただきますと、おおむね二十年後においても積立金を維持して安定的な給付が可能になるものとされているところでございます。」
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