2016年08月26日

介護・福祉の施設・活動を巡る旅37件目〜ゴールドサポーター?!〜綾部市社会福祉協議会

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 京都府綾部市役所を訪問し、綾部市における担い手育成の取り組みについて、綾部市社会福祉協議会事務局長、綾部市高齢者介護課長等から説明を受けました。

 綾部市では、平成28年3月末で高齢化率が36.2%に達しました。これは平成52年(2040年)の日本の高齢化率の予測値と同程度です。高齢化率の視点だけで見れば、約20年後の日本の姿がそこにはあると言えるかもしれません。

 このような中、綾部市では市社会福祉協議会に委託して、認知症に限らず生活に困難を抱える人を支える担い手の育成に取り組んできました。

 ちなみに、綾部市は下着メーカーのグンゼの発祥の地です。登記上の本社は現在も同市であり、記念館もあるそうです。

1.担い手育成の仕組化

 綾部市では平成18年より認知症サポーターの育成に熱心に取り組んできました。平成28年3月末現在で9,000人程度のサポーターがおり、人口における割合は25.5%です。これは全国平均の5.5%を大きく上回る数字です。また、認知症サポーターの登録制も任意で行っており、3,000人程度が登録することで、社協から定期的な情報を受け取っています。なお、綾部市の取り組みは平成25年に全国キャラバンメイト連絡協議会推進委員会によって表彰されています。

 また、同時期にシルバーサポーターというステップアップの研修を開始し、平成21年からは厚労省が推進する生活・介護支援サポーター事業をゴールドサポーターに位置付け、さらなるステップアップの研修を行っています。平成28年3月末現在でシルバーサポーターは約2,300人、ゴールドサポーターは約370人いるそうです。なお、金銀両サポーターにもリングがあるようで、事務局長の腕には3色のサポーターリングが輝いておりました。

 認知症サポーター養成講座の課題として、その内容が入門的なため認知症の方を支える担い手の育成としては不十分であることやリング取得後のステップアップや活動開始への機会が少ないことが挙げられます。

 綾部市社協では、3種類の研修講座を順序立てて用意し、それぞれの研修にリングを用意することでわかりやすい動機付けも組み込むことで、担い手の育成を仕組化している点が、注目に値すると私は考えます。

2.認知症のみに特化しない地域福祉の担い手育成

 シルバーサポーターとは、綾部市社協が独自に作ったカリキュラムによって行われる研修を受けた担い手です。内容としては、綾部市の概要、地域福祉と自立、高齢期の心身の変化及び市内の高齢者の相談窓口といった内容を基本として、受講者のニーズに合わせてアレンジを加え、高齢者福祉全般への理解が深まる形になっています。講師は社協の職員が務めます。時間は60分程度です。現在2,000人強のシルバーサポーターがいます。

 ゴールドサポーターとは、厚労省が推進する生活・介護支援サポーター事業を綾部市版にした研修を受けた担い手です。研修内容は対人援助の基本、コミュニケーション技法、キャップハンディ体験、ニーズの考察、社会資源の考察及び社会資源マップづくり等、多岐に渡っています。講師は社協職員以外に大学教授や介護福祉士、社会福祉士といった専門職が務めます。受講期間は5日間で20時間となります。現在、400人弱のゴールドサポーターがいます。

 シルバーサポーターには年2〜3回程度、ゴールドサポーターには毎月、サポーター向けニュースレターを送付しています。担い手のレベルに合わせて伝える情報の量と頻度を変えていく手法は非常に合理的かつ効果的であると感じました。

 また、両サポーターは認知症サポーターのステップアップ研修という位置付けですが、認知症のみに特化していない点が重要です。世の中で支えを必要としている人は認知症の方だけではありません。私はこの点が非常に大切であると考えると同時に、「地域福祉」の担い手を育成していこうという社協職員のみなさんの並々ならぬ思いを感じました。

3.学びから実践へ

 金・銀サポーターになった方の中から、地域福祉に関わる人が出てくるという成果も段々と出てきているそうです。例えば、地域サロン・認知症カフェの開所・運営やボランティアを行う人が増えてきたとのことでした。
 
 そして、この成果を単体の成果で終わらせない仕組も見逃せません。「ハッピーカード」という高齢者の方との援助にかかるエピソードを記入し、発表するための用紙の配布や、認知症サポーターを養成する側のキャラバンメイト同士が情報共有するキャラバンメイト連絡会といった場も提供しています。

 このような取り組みの結果、各サポーターの良い取り組みの情報が共有され、さらなる活動の底上げに繋がっているようでした。カフェへ人に集まってもらうやり方やカフェで足湯をやると輪ができるなど様々な有効な取り組みをご紹介頂きました。地域を越えて神奈川県大和市に住む私もその内容を聞き、情報共有できました。また、地域での実践に生かせそうで、聞いていてワクワクしました。

 その他、高齢者や認知症の方々及びその家族を応援する店をシルバーサポート店(55店舗)に認定したり、ゴールドサポーターの上にくらしサポート推進員という地域福祉のコーディネータを育成しようとする挑戦など、お話をお伺いしていて非常に勉強になりましたし、私の地域でも生かせそうなことも少なくありませんでした。

 上級認知症サポーター養成の先進事例ということで当初はお伺いしましたが、良い意味で裏切られた取り組みでした。

 説明の際、事務局長や職員の皆さんの楽しそうな雰囲気が印象的でした。このような雰囲気に今回調査した取り組みの自発性が感じられます。担い手を育成するという最も大切ですが、困難な取り組みに挑戦されている点に敬意を表し、また調査に対応して頂いたことに感謝申し上げます。

千里の道も一歩から

大 和市内訪問施設・活動:13件
神奈川県内訪問施設・活動:12件
神奈川県外訪問施設・活動:12件

●綾部市社会福祉協議会のHPページ http://ayabe-shakyo.or.jp/manabi.html
posted by 菅原直敏 at 16:38 | 介護・福祉の施設・活動を巡る旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月25日

介護・福祉の施設・活動を巡る旅36件目〜この子らを世の光に(糸賀一雄)?滋賀県立近江学園

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滋賀県立近江学園を訪問し、植田重一郎園長より、施設の沿革と概要の説明を受けた後、施設内を視察しました。
 近江学園は昭和21年11月に当時滋賀県職員であった糸賀一雄先生らを中心として設立された知的障害児及び孤児収容施設です。昭和23年4月、児童福祉法施行に伴い「滋賀県立近江学園」となりました。6万8千平米(東京ドームの1.5倍の広さ)という広大な敷地に、緑に囲まれた施設群が広がっています。
1.この子らを世の光に〜糸賀一雄の痕跡
 「この子らを世の光に」と言えば、日本で福祉に関わるものであれば知らない者はいない程、有名な糸賀一雄先生の言葉です。
「『この子らに世の光を』あててやろうというあわれみの政策を求めているのではなく、この子らが自ら輝く素材そのものであるから、いよいよ磨きをかけて輝かそうというのである。『この子らを世の光に』である。この子らが、生まれながらにしてもっている人格発達の権利を徹底的に保障せねばならぬということなのである。」
(糸賀一雄著「福祉の思想」より)
 福祉学のテキストでしか糸賀先生に触れたことはありませんでしたが、今回の調査では先生にかかる門外不出の資料も拝見することもでき、改めて先生のエネルギーを時代を超えて感じることができました。
 まず、興味深かったのが先生の経歴です。京都帝国大学出身のエリートだったためか、若くして滋賀県庁内の様々な要職を歴任しています。昭和17年頃には県職員と兼任で県警の警部を勤めています。現在の県庁・県警の組織関係ではありえないことですが、戦前はこのような兼任もあったようです。また、近江学園は民間施設として開設されていますが、何故県職員であった先生が園長になることができたのかは、現園長にお伺いしても、先生の経歴書を見ても判明しませんでした。
 自らを白い共産主義者と名乗り、職員の給与をプールし、子供たちの支援にあて、残った部分を職員に再配分するようなことも行っていたそうです。現在であれば、おおよそ許されないことですが、当初はそれくらいの熱意を持って臨んでいたことの表れかもしれません。現園長から説明を頂いた、耐貧の生活、不断の研究及び46時中勤務という、過酷な先生の考えも、日本の福祉の黎明期には必要な要素であったのかもしれません。
 この中で不断の研究の理念は現在も生きており、近江学園の職員は年初に自らのケアについて研究目標を設定し、発表会を行っているとのことでした。科学的根拠(エビデンス)に基づく支援のためです。
 先生の影響は近江学園に留まらず、派生して様々な施設が県内に設置されただけではなく、県外にも及びます。例えば、神奈川県秦野市にある弘済学園は、近江学園の流れを汲む千葉県の日向弘済学園が移転したものです。
 この他にもここに書ききれないくらい糸賀一雄先生のお話しをお伺いしましたが、先生亡き後においても、多くの影響を世の中に与え続けていることを感じることができました。
2.職業訓練
 近江学園の特徴として、職業訓練が挙げられます。これは全国の児童施設にはない取り組みだそうです。
 児童は木工と窯業の二つのコースのどちらかを選択し、日々職業の訓練に取り組みます。木工と窯業の2種類しかありませんが、これは彼らが将来的にこのどちらかの分野に進むことを目指しているのではなく、この作業を通じて、わからないことを人に聞いたり、人と対話をしたり、8時間働く感覚をやしなったりといった仕事をするために必要な感覚を身につけさせることに主眼を置いています。
 
 従って、作業場にはタイムカードも置いてあります。もちろん給与計算に必要なわけではなく、通常の職場にはたいていタイムカードがあるため、職業訓練として体験をすることに意味があります。
 児童が作成した作品を拝見しましたが、中には世の中に出して商品になるような品質のものもあり、実際に売られているとのことでした。現在の天皇陛下が皇太子の時に近江学園に行啓された時に座られた椅子などは大変素晴らしいものでした。
 近年はアールブリュットとして、様々な作品を展覧しているそうです。
3.障害の多様化とニーズの変化
 近江学園は戦災孤児の収容施設として始まりました。戦後という時代背景があったためです。その後、高度経済成長期には障害児がその中心となり、現在では虐待や発達障害も含めた多様な障害への対応が求められています。また、大規模施設から小規模な小舎への転換も時代の要請となっています。
 これらの支援の課題を、@被虐待児の育ち直し、被虐待からの回復、A重度児の生きにくさの軽減及びB軽度児、発達障害児の自立支援に同学園ではまとめています。
 施設の建て替えも検討される中で、これらの課題にどのように向き合って行くかが重要であるとの園長のお考えでした。これは神奈川県にも当てはまることです。
 平成28年7月26日に神奈川県立津久井やまゆり園で起こった惨事によって、神奈川県のみならず全国的に障害者施設のあり方が問われています。施設の安全をどう守るかという防犯面の議論も大切ですが、改めて障害を持った方々と如何に共生社会をつくっていくのかということに目を向けていくこと抜きには語れません。
 現代に生きる私たちにこそ、「この子らを世の光に」という糸賀一雄先生の理念を見つめ直す必要があると強く感じました。
Stay hungry, Stay foolish!!
大 和市内訪問施設・活動:13件
神奈川県内訪問施設・活動:12件
神奈川県外訪問施設・活動:11件
滋賀県立近江学園のHP http://www.pref.shiga.lg.jp/e/omigakuen/
posted by 菅原直敏 at 18:50 | 介護・福祉の施設・活動を巡る旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月22日

第233回県政スクエア〜テーマ:フードバンクについて

第233回県政スクエア〜テーマ:フードバンクについて
フードバンクとは、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品を個人や企業から引き取り、生活困窮者や福祉施設等に配給する活動です。米国で1970年前後に始まり、日本では2002年にNPO団体によって始まりました。
 先月、神奈川県央地域を拠点に生活困窮者に向けてフードバンクを行っているNPO法人ワンエイドを訪問し、お話をお伺いしました。元々は高齢者の住まいサポートから、フードバンクに対するニーズを発見したのが、取り組みの経緯だそうです。
 私は、平成20年に「食品廃棄物の発生抑制に向けた国民意識の醸成を求める意見書」を提案し、可決させるなど、食品廃棄の問題に取り組んできましたが、環境問題と福祉問題の両方の解決に結びつくフードバンクの取り組みを県議会でも取り上げていきたいと考えています。
 第233回スクエアは、フードバンクをテーマにワンエイドの方々からお話を頂きます。また、食品の受け付けも行いたいと思います。消費期限のあるレトルト食品や缶詰をお持ち頂けたら幸いです。
●第233回県政スクエア〜テーマ:フードバンクについて
【日 時】8月27日(土)、13時半〜15時
【場 所】渋谷学習センター304講習室
【講 師】NPO法人ワンエイドのみなさん(松本篝理事長と石塚恵理事)
【備 考】事前申し込み、参加料等はありませんのでお気軽にお越し下さい。
消費期限のあるレトルト食品や缶詰をお持ち頂けたら幸いです。
●第232回県政スクエア〜アンガーマネジメント
【日 時】8月27日(土)、10時〜12時
【場 所】渋谷学習センター307会議室
【テーマ】アンガーマネジメントと高齢者虐待
【備 考】第230・231回と同内容です。
posted by 菅原直敏 at 08:36 | 最新情報・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月04日

介護・福祉の施設・活動を巡る旅35件目〜災害時における介護施設の役割?特別養護老人ホームひろやす荘

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熊本県益城町で特別養護老人ホーム等、介護事業を総合的に運営するひろやす荘(社会福祉法人慈光会)を訪問し、理事長と施設長から、震災時の介護現場の現状等についてお話を伺った。

 益城町自体は被災の爪痕がひどかったが、数年前に立て直されたゆろやす荘は非常に素敵な内観の特養で、結果的に被災を免れ、被災地支援の拠点にもなった。

(1)有志による支援
 
 施設長のお話によると震災発災後、ひろやす荘に駆けつけたのは全国訪問ボランティアナースの会キャンナスや社会福祉法人福祉楽団などの民間団体の皆さんだったそうです。災害支援に慣れたボランティアが参集し、自発的に支援活動を始めたとのこと。他にも私の地元の特別養護老人ホームみなみ風の理事長等、神奈川県内の介護関係者も活躍していたとのお話しをお伺いした。
 災害は起こらないことが最も良いが、災害が起こるたびに支援に熱心な人々の支援スキルやネットワークが向上している印象を受けた。このような公によらない支援の力は大切にしたい。
 

(2)機能しなかった公的システム

 行政の構築したシステムが機能しないというジレンマに直面したとのお話があった。
 例えば、福祉避難所「「主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この号において「要配慮者」という。)を滞在させることが想定されるものに あつては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その 他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環 境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものである こと。」(災害対策基本法施行令第20条の6第5号)」とされている。
 ひろやす荘も協定を結んでおり、福祉避難所設置の申請を町役場に行ったが、担当者が配置転換されたばかりであったこともあり、福祉避難所についてしっかりと把握していなかったとのことであった。
 災害時にかかる制度や協定は大規模な災害の度に積み上げられているが、改めてその仕組みが機能するかを確認する作業を平時から行うことが重要であると感じた。

3.インフラとしてSNS
 
 今回の災害において、SNSが支援に関する情報共有において大きな力を発揮したとの説明があった。東日本大震災の際にもSNSが情報を入手するツールとして注目をされたが、あれから5年が経ち、コミュニケーションのインフラとして機能していることがわかる。
 SNSは文字データが基本であり、状況によっては画像や動画情報を共有できるという点が特徴であり、多人数の情報共有には有効な手段である。しかし、前提として通信基盤が整備され、電波状況が有効に機能していることが必須である。従って、災害時においてもWIFIなどが有効となる整備を神奈川県でも進めていく必要があると感じた。

 以上、ひろやす荘の調査を通じて感じたことは、公民どちらの支援においても、普段より顔の見える関係をしっかり構築しておくことである。平時に機能しない関係が有事に機能することはないということである。他にも、民間の人が避難してきたために福祉避難所として以上の役割が求められるなど、災害時には予期せぬことが多く起こるとのことであった。

 災害時における介護施設のあり方については、今後も調査を進めていきたい。

千里の道も一歩から

大 和市内訪問施設・活動:13件
神奈川県内訪問施設・活動:12件
神奈川県外訪問施設・活動:10件

ひろやす荘のHP http://www.jikou-kai.com/hiroyasu
posted by 菅原直敏 at 18:48 | 介護・福祉の施設・活動を巡る旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする